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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第30章 五色の夜 春日山城編5 【信玄】


ワクワクしている様子で話し続けるハルの顔は、今までの印象よりずっと幼く見えた。

実際いくつなのかはわからないけど、たぶんこれが年相応なんだろう。

戦場で指示を出していたとき、城主に堂々と反論してたときとは別人のよう。

不思議な人、その時々で全然印象が違う。

「では申し訳ないけれど、どうかよろしくお願いします」

私が頭を下げると、ハルは首を横に振った。

「敬語を使わなくていい。普通に話してくれ。俺のほうが年下だろうし」

「…わかった」

「お願いがある。無事に越後に送り届けたら…」

「…」

お願い?一体何だろう?

「名前を教えてくれ。事情があるのだろうが、決して悪いようにはしない」

「…」

「…名前すら知らないままでは、寂しい」

ハルはこちらを見ず、照れくさそうに前を向いたまま言った。

「うん」

私が頷くと、彼はお尻にバネがついてるかのように勢いよく跳ねて立ち上がる。

「そこで待ってろ!馬を借りてくる!」

しばらく走ってから振り返って、無邪気な笑顔を浮かべた。







しばらく一人で縁側に座っていたら次第に風が出てきて、ざわざわと木を揺らし始めた。

それはみるみる強くなり、ビュービューと不気味な音をたてる。

やがて雨も降り始めた。

そんな、また…?

これは例のアレだよね?

「降ってきたな。大丈夫か?」

そこへ馬を連れたハルが駆け寄ってきた。

「危ないから近づかないで!」

私が叫んだ瞬間、轟音とともに白い閃光が地面に落ちた。

私の周りの空間が歪んでいく。

もう時間がない。

「ハルー!!いきなり消えるけど、ごめんなさい!助けてくれてありがとう!!どうか…」

ハルはこちらに手を伸ばして必死で何か言ってたけど、その声はもう届かなかった。

どうか、信念を貫けますように…

足が宙に浮いてワームホールに飲み込まれながら、ひたすらそう願う。

さっき、彼の無邪気な笑顔を見たとき、なんだかとても切なくなって胸が痛んだ。

まだ少年である彼の純粋さ、正義感の強さが、この乱世の中ではとても危ういものに感じたから。

目を開けたままでいると、不思議なことに暗闇の中からハルのその後の姿が見えてきた。

すべてを上から見ているような視点で、まるで映画のダイジェストのよう。
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