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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第30章 五色の夜 春日山城編5 【信玄】


ここまでの天気の急変、普通はありえない。

…ねえ佐助くん、これって例のアレだよね?

兆候はあったのかもしれないけど、長期不在だったから知らせてもらうのは難しかったんだろうな…。

「まいったな。とりあえず帰ろう」

羽織を広げて雨から私を守ってくれようとする信玄さま。

そのとき白い光が空を割り同時に轟音が響いた。

私と信玄さまの間を引き裂くように突風が吹き、私の体は宙に浮いてそのまま後ろへ飛ばされた。

空間がグニャリと歪むようなこの感覚、これはまぎれもなくワームホール。

「名無しーっっ!!」

「信玄さまぁーっ!!」

ああ…

心の準備ができていないまま、この時が来てしまった。

いきなりお別れだなんて悲しい。

とにかくお礼を伝えたい。

「お世話になりました!色々ありがとうございました!どうか皆さまにもお伝えくださいっ!!」

私は精一杯の大声で叫ぶ。

信玄さまも必死な表情で何か言っているけど、その声はもう聞こえなかった。

得体のしれない私に優しくしてくれた武将たちや春日山城の方たちの顔を思い浮かべる。

どうかお元気で、悔いなく生き抜いて…

ただ、それだけを願いつづけた。






薄暗い…雨はやんでいる…

あれ?足が地面についてない…

私、浮いてる…?

そこまで認識したとき、

「うわっ!!」

一気に重力が戻り、私は1メートルくらい落ちた。

「痛い…」

座りこんだまま考える。

ここはどこ?現代に戻れたのかな?

ううん、違う。

駆け抜ける足音、とびかう怒号、刀がぶつかり合う金属音、銃声も聞こえる。

そしてビリビリと肌で感じる闘気、殺気。

……ここは戦場だ。最初に現代からタイムスリップして飛ばされた本能寺と同じような。

たぶんまだ戦国時代にいる。

ワームホールにのみこまれたけれど、空間の移動だけで時間の移動はなかったの?

とにかく逃げなきゃ。

体を起こして辺りを見回すと近くに古い廃屋があり、とりあえずそこに隠れようと身を屈めながら、そっと外壁に近づく。

「何者だ?」

突然、廃屋の角から甲冑姿の武士が姿をあらわし、私に刀を突きつけた。

「っ…!」

とっさに私は両手を上げた。

映画とかドラマで見る銃を突きつけられているシーンみたいに。

このポーズ、果たして戦国時代でも敵意はないと伝えられるの?
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