第29章 五色の夜 春日山城編 4 【義元】R18
「今夜は、たくさん愛でさせて」
聴く者を蕩けさせる楽器の音色みたいな声で囁かれ、ゆっくりと寝かされた。
覆いかぶさった義元さんの細く長い指が、
しっとりとした掌が、
やわらかな唇が、
私の身体のすみずみまで触れる。
匂い立つ色気にあおられて私の本能的な熱が引き出され、どんどん増していく。
彼の微笑みには深い包容力があって、乱れてしまっても、自分をさらけ出しても、すべて受けいれてもらえる気がした。
丁寧な所作でたくさん愛でられ、肩だけではなく、今まで何とも思ってなかったり、コンプレックスだった体の他の部分も褒めてくれた。
それも、今まで聞いたことのないような詩的な表現で。
おこがましくも嬉しく、何だか自分自身が前よりも愛おしく感じられる。
義元さんとの夜は、まるで御伽草子の1頁のようなあでやかさ。
いつもは涼やかな彼の顔が快感に歪んだのはハッとするほど美しくて、私の記憶に鮮烈に焼きついている。
親愛の情を持つ異性同士が、お互いをより深く知るための行為。
そんな経験を、今度は義元さんと重ねた…。