第12章 私ができること
その場の全員が中央に座る城戸に視線を向けた。
城戸は短い息を吐いたあと、ゆっくりと話し始めた。
「今回の作戦は可能な限り対外秘として行うものとする。」
「対外秘?市民には知らせないということですか?」
対外秘という言葉に反応した嵐山が城戸に問いかける。
城戸は「そうだ。」と冷静に答えた。
「大規模侵攻や四塚市の騒動からまだ日も浅い。この短期間に三度侵攻されるとなれば、市民の動揺が増大する可能性がある。そうなれば現在進行中の遠征、奪還計画に支障が出なとも限らない。当然敵の出方次第にもよるが、今度ばかりは市民には襲撃があったことを気づかせない方がいい。」
「気づかせないのレベルだとボーダー内にも情報統制が必要になりますが。」
風間はそこまで言うと忍田に視線を向ける。
忍田はその意図をくみ取ったのか、頷き言葉を続けた。
「その通りだ。B級以上必要最低限の人員にのみ伝える。それ以外は普段通りに回してもらう。防衛任務もランク戦も平常運転だ。」
「こりゃ大変だな。迅の予知がなきゃなかなかハードだ。」
そう言いながらもニヤリと太刀川は笑う。
「人死が出ないっぽい分気分は楽でしょ。」
「敵の目的が分からない以上厄介だがな。」
「一応大規模な襲撃の可能性を抑えつつ、基本的にはA級中心で迎撃に当たってもらう。」
「小部隊でやるなら天羽の力を借りた方が良さそうですね。」
「天羽?」
「アイツは極秘作戦向いてないでしょう。」
「いや、アイツのサイドエフェクトを借りる。」
東の意見に反論した冬島と太刀川だったが、東の答えにその手があったかと納得した間の抜けた声で「あ〜」と返す。
「なるほど確かにそうだ。それも打診しておこう。」
「今回の作戦はお前の予知が前提になっている。働いて貰うぞ...迅!」
城戸は迅に鋭い視線を向ける。
「そりゃもちろん遠征計画を潰させる訳には行きませんから。でも───」
迅はやる気満々に笑顔を向けるが、彼から発せられた言葉が歯切れが悪かった。
「”でも”なんだ。」
不満そうな風間がギロリと迅を睨む。