第7章 恐怖の前触れ
«だがその前に…ボーダーにはネイバーに対して、無差別に敵意を持つ者もいると聞く。私自身まだボーダー本部を信用していない。ボーダーの最高責任者殿には私の持つ情報と引き換えに、ユーマの身の安全を保障すると約束していただこう。»
城戸司令は少し考えた後
「ボーダーの隊務規定に従う限りは、安全と権利を保障しよう。」
と言った。
«確かに承った。それではネイバーについて教えよう。ネイバーの世界……すなわち、近界に点在する国はこちらの世界と同じように、国境で分けられているわけではない。近界のほとんどを占めるのは果てしない夜の暗黒であり、その中に近界民の国々が浮かんでいる。
それらの国はそれぞれ決まった軌道で暗黒の海を巡っており、ユーマの父ユーゴはそのあり方を“惑星国家”と呼んだ。»
「“惑星国家”…!?」
«“攻めてくるのはどの国か”。その問いに対する答えは、“今現在、こちらの世界に接近している国のうちいずれか”だ。»
とレプリカ。
「そこまでは分かっとる!知りたいのは“それがどの国か”!その“戦力”!その“戦術”だ!」
すると、栞はタブレットを開く。
「OK.レプリカ先生。宇佐美、よろしく。」
と林藤支部長。
「あいあいさー!」
と栞が返事をすると画面をタップする。
部屋の中心に置いてあった近界の配置図は、何倍もの大きさにもなる。
«これがユーゴが自らの目と耳と足で調べ上げた、惑星国家の軌道配置図だ。この配置図によれば、現在こちらの世界に接近している惑星国家は4つ。»
また栞は画面のボタンを押すと、配置図の中の4つの国に色が付く。
「これは!」
映し出されたのは
広大で豊かな国を持つ水の世界、
海洋国家 リーベリー
特殊なトリオン兵に騎乗して戦う、
騎兵国家 レオフォリオ
厳しい気候と地形が敵を阻む、
雪原の大国 キオン
近界最大級の軍事国家、
神の国 アフトクラトル
「…そのうちの4つのどれか、あるいはいくつかが大規模侵攻に絡んでくるというわけか?」