第5章 遠征部隊の実力
「違うよ城戸さん。交渉しに来たんだ。」
やっぱりか……。
何も言わずついてきてって言われたから来たけど。
「交渉だと?!裏切っておきながら…」
「いや、本部の精鋭を撃破して本部長派と手を組んだ。戦力で優位に立った今が交渉のタイミングでしょう。」
「こちらの要求は一つ。うちの後輩、空閑遊真のボーダー入隊を認めて頂きたい。」
悠一の要求内容、
遊真のボーダー入隊を許可すること。
そんな簡単な話ではないはずだ。
「何!?どういうことだ!?」
「太刀川さんが言うには、本部が認めないと入隊したことにならないらしいんだよね。」
「なるほど…。"模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる"か。」
「ボーダーの規則を盾にとってネイバーを庇うつもりかね!?」
「…私がそんな要求を飲むと思うか?」
『……』
そう、ネイバーが嫌いな城戸指令がこれを受け入れる訳がないのだ。
「もちろん、タダでとは言わないよ。代わりにこっちは"風刃"を出す。」
『「…!?」』
風刃を出すって…
しかし、悠一の真剣な顔から本気だと伺える。
「うちの後輩の入隊と引き換えに"風刃"を本部に渡すよ。」
「本気か迅!」
「なんと…!」
「(そう来るか…)」
「そっちにとっても悪くない取り引きだと思うけど?」
「…取り引きだと?そんなことをせずとも、私は太刀川たちとの規定外戦闘を理由におまえからトリガーを取り上げることもできるぞ?」
「その場合は当然、太刀川さんたちのトリガーも没収なんだよね?それはそれで好都合。平和に正式入隊日を迎えられるならどっちでもいい。」
「っ…」
『城戸司令。』
「…?」
『私の"星月華"も出します。…だから、遊真の入隊を認めて下さい。』
星月華は私の黒トリガーの名前だ。
「ゆる!?」
「辻!?」
星月華を城戸司令の前に置く。
悠一は止めようと、
「おまっ、ゆる!!何してんだ!?形見だろ!?黒トリガーを渡すのは俺だけでいいんだよ!」
『悠一のだって最上さんの形見でしょ!』
「!」