強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第2章 嫉妬、そして……独占欲
自分の気持ちを自覚してから、まともに佐野君の顔が見れない。
私、今までどうやって佐野君と話していただろう。
佐野君は、相変わらず人懐っこく、明るい調子で話し掛けてくれるけど、その度にテンパってしまって、ちゃんと笑えてるか、答えられているかが自分ではよく分からない。
分かるのは、目が見れていないという事だけだ。
恥ずかしくて堪らないのに、私を見つけると必ず声を掛けてくれるのが、凄く嬉しくもあって。
つい浮かれてしまう。
そんな落ち着かない日々を送っていたある日、私は休み時間に次の授業の準備要因として選ばれてしまい、たまたま近くにいたクラスメイトの男子と共に、道具を手分けして持ちながら廊下を歩いていた。
「ごめんね、重い方持たせちゃって」
「別にそんな重くないし、それに、女子に重いもん持たせるわけにいかないじゃん」
さすが人気な男子なだけあって、言っている事が優しい。
彼はクラスの女子の間でも人気な男子で、目立つ方じゃない私にも、気さくに話し掛けてくれる人だ。
「つーか、先生も人使い荒くね? この程度の量の道具くらい、自分で持ってけって思うわ」
「あはは、でも、忙しいんじゃないかな?」
「さんは優し過ぎるって。この間なんて、こうやって頼んでて、自分は他の奴等と自販機前で、ジュース飲んでダベってたんだぜ?」
不満そうに口を尖らせる彼に、私は笑う。
男子と話すのは得意じゃないけど、彼とは気楽に話せるから楽しい。
「っ! 何してんの?」
「さ、佐野君っ!?」
急に後ろから抱きつかれ、心臓が飛び出そうになる。そのせいで、プリントを落としてしまう。
「さん、大丈夫っ!?」
「お前誰?」
道具を降ろしてプリントを拾おうとしてくれた男子を、佐野君が威嚇するような鋭い目で見る。
「だ、大丈夫、びっくりしただけだから……」
プリントを拾い、佐野君が拾ってくれたプリントを受け取ろうとするけど、その手は空を切った。
「どこまで行くの?」
佐野君に聞かれ、場所を口にした瞬間、また違う声がする。
「おいマイキー……いい加減急に走り出すの、マジでやめろ。後、無闇やたらに絡むな」
「ケンチンに関係ねぇじゃん」
言い合いになる二人を見る。