強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第5章 弱さも脆さも分け合って
万次郎のクラスに着くと、入り口に龍宮寺君が立っていて、目が合った。
「よぉ、マイキーの世話大変だろ」
「とりあえず授業受けてる間だけ戻っててもらえたら助かるかな。クラスメイトが萎縮しちゃうし。何より先生が可哀想で」
龍宮寺君と二人で、寝ぼけてフラフラする万次郎を見て苦笑した。
龍宮寺君に万次郎を任せた後、私はクラスに戻って授業の準備をする。
その後は何事もなく平和に授業が進み、お昼休みに突入する。
今日は万次郎の友達と一緒に、屋上でご飯なんだけど。
「万次郎、ちょっとだけ離れて。食べづらい……」
「俺は平気」
いや、私が平気じゃない。
後ろから万次郎に羽交い締めにされているような体勢で、肩には万次郎の顔が乗っている。
私がおかずを箸で摘むと「あー」と口を開くから、私は万次郎の口におかずを入れていくという作業をする。
「マイキー、ちゃんに飯食わさねぇつもりかよ」
「も食えばいいじゃん」
「そんな体勢じゃ食いづれぇって……」
龍宮寺君の言葉に当たり前と言ったような返答する万次郎に、三ツ谷君が呆れた顔をする。
「お前も大変だな……」
「あはは……」
林田君に言われ、苦笑するしかない。
食べられないわけではないから、とりあえず隙を見つつご飯を口に入れた。
何とか食べ終わって一息吐く。
膝に万次郎の頭の重みを感じながら、空を仰ぐ。
平和で、静かで、ポカポカ陽気に眠くなる。
そんな時、屋上の扉が少し乱暴に鈍い音を奏でた。
「マイキー君っ!」
「タケミっち! お前、どうしたっ!?」
傷だらけの武道君が慌てた様子で立っている。
話によると、千冬君と二人で絡まれて、今は千冬君と場地君が相手をしているらしい。
「人数が多くてっ!」
「マイキーはいい。俺等だけでいいだろ」
龍宮寺君がそう言って、三ツ谷君と林田君が立ち上がる。
万次郎は目を開けて、何も言わない。
「万次郎、行ってらっしゃい」
私は彼の唇にキスをする。
頭を撫でて立ち上がる彼に、私は笑顔で頷いた。
やっぱり彼はこうじゃなきゃ。
そして私はそんな彼を、笑顔で送り出す。
そう、私は“無敵のマイキー”の彼女だから。
[完]