強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第2章 嫉妬、そして……独占欲
何でちゃんと話を聞かなかったんだろう。
電話に出ていれば、こんな状況にはならなかったのに。
「……ごめんなさい……」
「何でが謝んの? 確実に悪いの俺じゃん」
万次郎はそう言うけど、私にも絶対非があるのは確かで。
「じゃ、おあいこ、な?」
無邪気に笑う万次郎に、鼻の奥がツンとする。
こんなに真っ直ぐな愛情をくれる彼を、少しでも疑った自分が嫌になる。
「それに、ヤキモチ焼いてくれたって事だろ? めっちゃ嬉しい」
照れたような笑顔で言う万次郎に、またドキッとさせられる。
私を責めるわけでも、怒るわけでもなく、素直に喜んでくれるこの人の優しさに、私は何か償える事はあるだろうか。
「何か、して欲しい事ない?」
私が言った事に、万次郎が呆気に取られた顔を向ける。
「して欲しい事? へー、何かしてくれんの?」
組み敷かれたままの体勢で、ニヤリと妖しく笑う万次郎に、心臓がドクリと跳ねた。
下ろしている私の髪を摘んで、口元に持っていく仕草が、妙に色っぽくて、鼓動がうるさい。
「私に、出来る事、なら……」
自分から言っていて、段々恥ずかしくなってくる。
早まっただろうか。
「じゃ、からちゅーしてよ」
何を言われるのか緊張しながら、万次郎のニコニコした顔が近づく。
私は過激な事を言われなくてよかったと、少し安堵しながら万次郎の唇に、自らの唇を恐る恐る触れさせた。
軽く触れた唇が、妙に熱くて。
けど、納得いかないような顔で、万次郎が口を開く。
「それだけ?」
「え?」
「そんなんじゃ足んねぇ」
そんな事を言われても困ってしまう。
「わ、私には、その……これ以上は、ハードルが……」
「俺の事、好きじゃねぇの?」
「……す、好き、だけど……」
目を細めて「ん」と口を軽く突き出す万次郎に、私は先程より少しだけ勇気を出す。
ちゃんと応えなきゃ、自分の気持ちを言葉だけじゃなく、行動でも伝えていかないといけない。
再び唇を当て、万次郎の開いた唇の隙間から、覚えのある限りの方法で、舌を入れる。
ぎこちない私の舌を、万次郎がうまく絡め取ると、いやらしい音がする。
「ん……の舌……一生懸命なの、可愛い……」