強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第2章 嫉妬、そして……独占欲
優しい笑顔が、凄く眩しく感じた。
ゆっくりだけど、確実にまた彼への想いが強くなる。
そんな事を思った日から少しして、私は帰宅する為に学校の門に向かって歩いていた。
「あ、万次郎……」
友達と集まると聞いていたから、まさか門の端にいるとは思わなかった万次郎を見つけて、私は少し嬉しくなる。
けど、次に視界に入った光景に、私は目を疑った。
夢だと思いたかった。
万次郎が、可愛い女の子に抱きつかれ、それに応えるように
、その子の背に手を回したのだ。
一度だって気にしなかった、どんな男でも必ず浮気をすると愚痴っていた、クラスメイトの言葉がこんな時に頭を過ぎる。
違うと思いたいけど、さすがに目の前で繰り広げられている事は事実で。
不良の世界は、私が知らないだけで、これが普通なのだろうか。
「じゃん、こんなとこで突っ立って何見てんだ?」
背後から声がしても、私はなかなか動けなかった。
「ん? マイキーと……あぁ、エマか」
エマ。可愛くて、色気のある女の子。
元カノかなとか、私の方が遊ばれているのかとか、色んな思考が巡り、何も言わずに学校を出て、彼等とは違う方向へ足を向けた。
早く、この場からいなくなりたかった。
三ツ谷君の声にすら、応える余裕がなかった。
気づいたら走っていて、通りかかった公園へ入る。相変わらず人が少ないこの場所の端にある、タコをイメージした遊具のトンネルになっている部分に入って座り込む。
頭がパニックで、どうしたらいいか分からない。
先程からずっとスマホが鳴り続けていて、無感情のままスマホを見て、ドキリとする。
“着信 佐野万次郎”
出る勇気も、泣き叫んで責める勇気も、ましてや私から別れを告げる事なんて事も出来なくて、カバンにスマホを突っ込んで膝を抱えた。
どうしたらいいのだろう。
胸が苦しくて、今までの万次郎の言った言葉や、行動が嘘だったなんて信じられなくて。
どのくらいそうしていたのか、気づいたら外は暗くなり始めていた。
「あ……帰らないと……」
呟いたのに、なかなか体が動かない。
立ち上がるのも億劫だ。
「……やっと……見つけた」
声がして、そちらを見る。
「かくれんぼ?」