強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第2章 嫉妬、そして……独占欲
恥ずかしくなり、鯛焼きを食べる事に集中する。
食べ終わり、デート経験も、友達と遊びに行く事もほとんどない私は、特に何処へ行くとかが分からず、二人で途方に暮れる。
「なぁ、ボーッとすんならさ、ちょっと別の場所にしねぇ?」
手を握られ、歩き出す。
人通りの多い見慣れない場所から、見覚えのある街並みに戻ると、いつも万次郎の乗るバイクが目に入る。
「後ろ乗って」
ヘルメットを渡され、後ろに跨る。
「しっかり掴まってて」
大きなエンジン音がして、体に響いて少し体が固くなって万次郎にしがみつく。
走り出したバイクが、気持ちいい風を運んで来る。
少し景色を見る余裕が出て来て、流れる景色を見る。
見晴らしがよくて、綺麗な景色が広がっていく。
「よし、着いたよ」
言われ、バイクから降りようとした私の体が、万次郎に抱き降ろされる。
「ひ、一人で、降りれるのに……」
「いーじゃん、俺がやりてーの。いい思いもしたし」
「いい、思い?」
ニコリと満面の笑みを浮かべて、私を抱き寄せたまま口を開く。
「おっぱい当たってた」
「っ!!?」
ちゅっと触れるだけのキスをして、また笑う。
「ま、ま、万次郎っ!」
「へへへ。つーか、これって彼氏である俺の特権だろ?」
無邪気に笑う万次郎に、私は何も言えなくなってしまう。
ただ、そんな事を言われたら、帰りのバイクに乗るのを多少なりとも躊躇ってしまう。
「は、恥ずかしいので、そーいうのは、言わないでいて欲しかったです……」
変な風に意識してしまった私の指に、さり気なく指を絡めて歩き始める。
少し歩いて、見晴らしのいい場所に二人で並んで立つ。
「凄い」
「いい景色だろ? こうやって見てたらさ、悩みとか嫌な事とか考えてる事全部、馬鹿らしくなんだよな」
いつも無邪気に笑って楽しそうにしている彼は、どんな事で悩んだりするんだろう。
その悩みを解決してあげるなんて壮大な事は、私には言えないけど、少しでも軽くしてあげれるようになりたいとは思う。
傍にいてあげる事しか出来ないけど、それが彼の為になるのであれば嬉しい。
そういう気持ちを込めて、絡む指の力を少し強くする。
「また、一緒に来てもいい?」
「ん? 当たり前じゃん」