強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第2章 嫉妬、そして……独占欲
彼は何も気にする様子はなく、変わらずニコニコしている。
「なぁ、今日の予定は?」
私は伯母さんの話をする。
「じゃ、デートしよ」
「別にいいけど、さ……万次郎は、友達大丈夫なの?」
最近ずっと彼を独占している気がして、何だか申し訳なくなる。
彼はきっと、友達を凄く大事にしてるだろうし、友達といる方が楽しいんじゃないだろうか。
後から来た私が彼を独占するのは、違う気がする。
「大丈夫だよ。ちゃんと遊んでるし、が気にするなら、一緒に遊ぶ? みんないい奴ばっかだけど、厳つい奴もいるし、は不良とか、苦手じゃねぇの?」
確かに、得意かと言われたら素直には頷けないけど、少なくとも、彼の友達には助けてもらったし、彼等が悪い人には感じなかった。
「みんなで遊んだら楽しいだろうけどさ……。俺、今日は二人がいい……」
寂しそうな顔で言われ、その表情に胸がギュッとなる。
負けた私は、二人でいる方を選んだ。どうも彼には勝てる気がしない。やっぱり人タラシだ。
手を繋いで歩いている間も、色んな人の視線が注がれていて、いたたまれないまま学校を出る。
「ねぇ、ま、万次郎……デートって、何処行くの?」
「考えてねぇ。は何処行きたい?」
突然言われても、デートなんてした事ないから分からない。
「とりあえず鯛焼き食いながら考えようぜ」
何故鯛焼きなのかと聞こうとしたけど、鯛焼きを嬉しそうに受け取る姿を見たら、聞かなくても分かった。
「鯛焼き、美味しいね」
「んー、最高」
口の端にあんこを付けながら、心底美味しそうに食べる万次郎が、口いっぱいに頬張る姿が凄く可愛い。
私はウエットティッシュを取り出して、万次郎の口の端に付いたあんこを拭き取る。
「ありがとう。でもさ、こういう時は口で取ってくれなきゃ駄目じゃん」
「ひ、人がいる場所では、何もしませんっ!」
「ちぇ」
少し拗ねたみたいに鯛焼きを頬張る。そしてまた口の端にあんこを付ける。
まるで弟達を見ているようで、可愛くて笑ってしまう。
「ん?」
モグモグと口を動かしながら、こちらを見る。
「ほら、また付いてる」
言うと、舌でペロリとあんこを舐め取った。
少し、ドキリとした。