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強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙

第2章 嫉妬、そして……独占欲




控え目にと言ったそばから、なかなか色々な事が起こっていて、思考が追いつかない。

「くすぐったいって顔、してないけど?」

「何っ……ん、ふぁっ……」

「……すっげぇ可愛い……」

静かな場所なだけに、お互いの唇を味わう音が、やたら大きく聞こえて、羞恥と興奮に体が熱くなる。

しばらく佐野君のペースで好きにされ、唇が少し痛くなってきた頃、やっと唇が離れた。

ただ、離れたのは唇だけで、体は相変わらず固定されている。

それでも、朦朧としてクタクタな今の私には、凭れ掛かれる佐野君の体はありがたい。

私が凭れて動かないのをいい事に、佐野君は首筋や耳付近に口付け続けている。

佐野君が吸い付いた部分が、チリチリと痛む。

「佐野君……私で遊んでるでしょ?」

「んー? 愛でてる」

「っ、んっ……」

そんな事をしていたら、いつの間にか外はオレンジ色になっていた。

佐野君と手を繋いで、帰り道をゆっくり歩く。

「佐野君、逆方向なのによかったの?」

「いーよ。とちょっとでも一緒にいてーし」

少しでも私との時間を大切にしてくれるのが、嬉しくてニヤついてしまう。

「ありがとう、佐野君」

「何で礼? つーかさ、いつまで苗字なわけ?」

名前で呼ばれないのが気に入らないらしく、不満そうだ。

でも、突然言われてもそんな簡単に呼べるわけもなくて。

「そのうち……」

「駄目だ。今言え」

「そ、そんな無茶苦茶な……」

向き合うように立たされ、ジッと見つめられる。物凄い、真っ直ぐな目だ。

「……ま……まん、まんじ、ろ……君」

「君いらねぇ。ほら、呼べよ」

頬に手を添えて、こめかみ辺りに口付けられ、顔に熱が集まる。

人通りがほとんどなくてよかった。これは、言わないとやめて貰えないようだ。

「ま、万次郎っ……はいっ、呼んだっ! 終わりっ!」

胸の辺りを押し返して、急いで距離を取った。

「これからちゃんと呼べよ」

満足そうに笑って言われ、頭を軽く撫でられた。

家に着いても、心臓はドキドキしっ放しだった。

「万次郎……」

ベッドに横になって、ぬいぐるみを抱きしめながら、何度も名前を呼んでみる。

目の前にいない時は、こんなにもスムーズなのに。
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