強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第2章 嫉妬、そして……独占欲
虚勢を張っては見たものの、体は正直で。
熱いまま震える体を、自らの手で抱きしめる。
「はぁ……刺激が強すぎる……」
唇を指でなぞり、息を吐く。
いつも無邪気に笑って、子供みたいにはしゃぐ佐野君が、あんなにも大人な顔で、私を甘美に誘う。
「敵わないなぁ……」
スマホが震え、メッセージに添えられた、ごめんなさいのスタンプに笑みが浮かぶ。
そっぽを向くスタンプを送ると、泣くスタンプが返って来る。そして、すぐ後にウサギのマスコットがハートの投げキッスをする可愛らしいスタンプ。
こんな可愛い事をされたら、許さない訳にはいかないじゃないか。
私はスマホをポケットに入れ、教室へ足を向けた。
放課後、私は久しぶりにゆっくり出来る時間を、図書室で過ごしていた。
落ち着いて勉強が出来るのは、夜遅く以外でなかなかない機会だから、こういう時間は大切だ。
静かな時間も、図書室も好きだ。
本棚の間を歩きながら、欲しい本が上の方にあって、小さな階段のついた台に登る。
本を手に取って、少しペラペラと捲る。
「へー……白か。これはこれでエロいな」
下から声がして、私は何気なくそちらを見ると、しゃがみこんで明らかにスカートを覗き込む佐野君がいた。
「ーーーっ!!?」
咄嗟にスカートを押さえると、バランスを崩す。
「おっと、大丈夫か?」
誰のせいだと思っているのか。まるで他人事みたいだ。
そこまで高くはないとはいえ、人が一人落ちたのに、佐野君は軽々と私を受け止めた。
抱っこされるみたいな格好なのに気づき、私は恥ずかしくなる。
「あ、ありがとう……」
が、佐野君は離してくれない。
「あ、あの……佐野君……離して欲しいんだけ……」
「やだ」
「やだって……」
抱き上げられたまま、佐野君は歩き出す。人が少ないとはいえ、多少は人がいるわけで。
本棚の奥の方の、多少は死角になる場所へ連行されてしまった。
奥の棚は、難しい本が多いから来る人は少ない。それでも、それを分かっている人はいて。
そこまで騒いでいるわけではないけど、まるで溜まり場みたいになっている。
「そこ、譲ってくんね?」
「あ? 誰に言って……げっ!」
「ど、どーぞっ! ほ、ほら、行くぞ」