強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第2章 嫉妬、そして……独占欲
体にあまり力が入らないから、意味がない。
「逃げないで……」
寂しそうな声と、困ったような顔に、抵抗が出来なくなる。
「佐野君っ、ずるぃ……」
「へへ、そんな優しいが、すっげぇ好き……」
「……やっぱりずるい……」
抗議する私の唇は、またゆっくりと塞がれた。
彼には勝てる気がしないと悟った瞬間だった。
―――ガチャッ、キィー……。
耳に音がして、ヒヤッとしたけど、佐野君が止まる事はない。
「さのっ、く、まっ……んんンっ!」
「やだ……ン……」
「マイキー、いるなら……っ!?」
もがく私を気にする事なく、キスをやめない佐野君と、耳に届く聞き覚えある声。
「うわぁー……えらいとこに来ちまったな……」
「おーおー、お盛んだねぇ……」
「てか、彼女、嫌がってね?」
佐野君の胸を叩いて抵抗するのに、やっぱり意味はなくて。物凄い力で捩じ伏せられる。
「んーっ! んんっ! ンっ、ふっ、ゃっ……」
「もうちょ、っと、だけっ……はっ、ん……」
明らかに見られているのに、佐野君がやめる気配はない。こんな羞恥な姿を晒して、どんな顔をすればいいのか。
けど、何をしてもやめてもらえないので、私は抵抗をやめた。
彼はそういう人だと、そう割り切るしかない。
「あっ、諦めた」
「マイキー相手に、抵抗なんて無駄だろ」
当たり前みたいな口調で、龍宮寺君が言ったのを聞き、心の中で激しく同意した。
もうちょっとだけと言っていたのに、なかなかやめてくれなくて、長く見世物になってしまい、さすがの私もこれには少し怒っている。
佐野君が唇を開くタイミングで、私は彼の下唇に噛み付いた。
「ぃってっ!」
普段からあまり怒る事に慣れていなくて、とりあえず隙が出来た彼の腕の中からすり抜ける。
唇に指を当てて、立ち上がる私を見上げる佐野君を一瞥して、私は何も言わずに背を向けた。
「?」
「あーあ、マイキー怒らせたんじゃねーの?」
背後でそんな声を聞きながら、屋上を後にした。
わざわざ友達の前でまで、する必要はないじゃないか。
恥ずかし過ぎる。
階段を降り切り、階段の下の少し入り組んだ死角になる場所がある。
その場所で私は座り込む。