第1章 片思いの彼に好きと言ってみた。
〜ヴィンスモーク・ニジの場合〜
「出来損ないの仲間のあのナミとかいう女、
うちにきてくんねェかなァ。」
「また言ってる。」
ヴィンスモーク家次男のこの男、
ニジはサンジを逃した後から
ずっとこんな調子で三兄弟で言っている。
「あ?お前もあんぐらいボンキュッボンになってみろよ。」
「別にナミさんみたいになってニジに好かれても嬉しくないし。」
なんて、強がりを言うけれど、
私は結局彼らの幼馴染兼許嫁候補、なだけ。
そして形式上、長男と結婚するのが流れだし。
「フッ、俺は別にセリアでもいいが?」
イチジは確かに彼らの中では落ち着いている方だし、
まだ優しいからこの中で結婚するなら
まぁ彼には手を焼かない。
「ハンッ、イチジ、こんなのでいいとは
あの出来損ないぐらいに堕ちたのか?」
こんなニジの言葉に私は振り回されているのも
事実であるのがなによりも悔しい。
でもそう、好きなのだ。
「...勝手に言っててよ。めんどくさい。
ヨンジ、あっちで遊ぼ。」
「あ?いいぞ。」
私に興味がないのなら、
私をそばに置かなければいいのに。
と言っても彼らの
お父上の言うことは絶対だから仕方ないのだろう。
「おい!」
あんまりにも私に見向きもしないもんだから、
もうどうとでもなればいいと今日こそは思ってしまった。
だから私は初めて突き放して
ヨンジの手を引いて部屋を出ようとする。
「...なに?」
「お、おいセリア、
泣いてん「コソッ言わないでヨンジ。」」
ドアに向き合ったまま立ち止まって、
知られたくないことを言おうとしたヨンジを止めて
振り向かずそのまま返事をした。
「なんだよ、ヨンジが好きなのか!?」
いつもコソコソしやがって、そう小さくつぶやいて
テーブルを軽く蹴ったようだ。
「もういいよ。あのね、
私はニジ、ずっとあんただけが好きだった。」
涙はもう流れてしまってるだろう。
だけれどできるだけ笑って伝え、
ヨンジと部屋を出る。
「なっ!俺だって!
だった、ってなんだよ!」
そう叫ぶのが聞こえたけど、
それだけじゃ私は許してあげない。
「私は巻き込まれたくはないんだが!?」
「あんたのお兄様を恨め。」
「セリア!」
このあとすぐに彼は追いかけてきて
ヨンジを追いやり私の腕を掴んで
無理矢理キスをしてきたのは内緒。
