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海の男たちに愛される話。

第1章 片思いの彼に好きと言ってみた。



〜ヴィンスモーク・イチジの場合〜

「イチジ!またあんた料理長をいじめたわね!」
「あ?俺は黙ってみてただけだが?」

毎度のごとくヴィンスモーク家には
暴言と暴力が飛び交っている。
私はこのヴィンスモーク家の長男のイチジへと
嫁入りを命じられた。

「お前は婚約者の分際で俺に楯突く気か?」
人としての情の欠落、
ヴィンスモーク・ジャッジのせいで
こうなっているのは仕方ないことなのだが、
やはり私はこんなことは許せない。
「サンジくんのおかげで少しはマシになったけれど....
言っておくけど私、あんたに嫁入りするなんて
決めてないから!」
小さい頃にお世話になっただけで
怖いからって両親が勝手に私を追いやったんだから。

「は?昔仲良くしてやっただろう。」
「そうね!昔はまだ好きだったわ!」

こんなやつでも小さな頃はいじられながらも
無意識に私だけに見せる優しさに
なんとも言えない感情を持ったけれど、
今はどうにもこうにもやってられない。

「....昔だけなのか。」
「え、なにその顔。」

サングラス越しに見える目は
珍しく悲しそうな顔に見えた。

「俺は昔も今もお前には優しくしているつもりだ。
俺からはどうせ離れられない。
だがお前がどうしてもというなら、
俺にどうしてほしいか言ってみろ。」

なんでこうも上からでしかものを言えないのか。

「私だけじゃなくて
周りにも少しずつでいいから優しくなって。」
「そうすればお前は「お前もだめ。」」

そういえば彼は舌打ちをする。

「そうすればセリアは俺から離れないんだな?」
「えぇ。」
「俺も...す、好きだ。」

も、なんて言うもんだから、
私が今も好きなのは決まってるのか、とも思ったけれど
やはり私は彼が好きだから、
ほんの少しの優しさを持つ彼と一緒に生きようと決めた。

「優しいイチジが好き。」
「っ、当たり前だ。」

そうして私から手を触れればなんやかんやで
私の手を引いてキスをする。


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