第1章 片思いの彼に好きと言ってみた。
〜イッショウ(藤虎)の場合〜
「ごきげんよう、大将藤虎さん?」
私は海賊。目が見えないおじさまは海軍。
それに三大将のひとりときた。
「またあんたかァ。」
まぁ私は最初から知ってはいて、
興味本位で話しかけたのが始まりだった。
「あんたか、って私のことわかってるみたいに。」
「お嬢さん、こんな夜更けにまたなんの用で?」
私はなぜこんなにもこの人に執着しているのか、
うんと歳上の彼を。
「.....私はどんな人間だと思う?」
もし盲目じゃなく出会ったら、
こうやって話せていたのだろうか。
もし盲目じゃなかったら、
私は彼に話しかけていたのだろうか。
「そんなこたァ聞かれても、
娘と言ってもいいぐらいの
綺麗なお嬢さんってェことしかね。」
綺麗だなんて見えてもないのによく言う。
でもそうだ、私は出会った時にも言われた、
この綺麗、という言葉で惹かれたんだ。
「嘘っぽく聞こえないのが
ずるいですよ藤虎さん。」
見えてないのはわかってるのに、
そう思ってくれているというのが嘘じゃないと、
そう思わせてくれる。
「私ね、...イッショウさんのことが好きみたい。」
初めて呼んだ名前。
そして少し詰めた距離。
「...なら次会うときまで他の海兵の方には
捕まんねェようにしておきなんせェ。」
「ッ、なんだ、バレてたのか。」
見えてない私を見下ろして
きっと冗談だと思われてるんだろう、
優しく頭をぽんぽんと撫で、
また、と歩き始める。
「次は手を繋いでみよ。」
本気で好きだって伝えないとね。