第1章 片思いの彼に好きと言ってみた。
「っ、ひっく、さ、サンジありがと。」
くすぐられたところがジワジワと残っている。
ひどすぎるイタズラに戸惑いもあって
目の前にいるサンジの表情にもたったいま驚いているところである。
「...お前、今のおれだったからよかったんだからな。」
「え?」
「そんな格好で目の前に現れたら
男だったら襲っちまってるってことだ。」
そう言われて私の服が大っぴらに乱れていることに気づいて、
慌てて服を正そうとする。
「ご、ごめん。変なところ見せて。」
男だったら、ってサンジも男じゃん。
でもそう、だよね。
サンジのなかでは私は女じゃないんだもん。
「くそっ、あんまり煽んなよ。」
「え?」
「お前今どんな顔でおれを見てると思ってんだよ。」
「な、わ、かんない!変な顔してた!?」
好きって、悲しいって、顔だった?
「男を誘う顔。」
「ちょ、サンジ!?」
誘うだなんて言われてなにがなんだかわからなくて
押し倒された体を起こそうとしても
上にサンジが跨ってるからすぐに捕まる。
「なんだよ。」
なんでそんな冷たい目で見るの。
ナミたちにはあんなにデレデレするのに。
「わたし、サンジの好みじゃないっ。
だから今離してくれたら忘れるから、離して!」
自分で言ってて辛いけど、
後からやっぱり冗談だなんて言われるよりマシだから、
自分の足で立てるまでは自分を落として終わらせよう。
「じゃあなんでそんな顔してんだ。」
「だからそれはっ!」
「おれじゃなかったらどうなってたと思う。
おれに助けを求めたからよかったものの、
ほかのやつだったらとっくに襲われてんぞ。」
これは襲ってるうちに入らないのか、
そう思ってしまうとこもあるけど
状況が状況だから、何を言ったらいいかもわからない。
「あんなに悶えた表情で助けてなんてよ、
火に油を注ぐようなもんだ。」
私を見下ろしてそんな呆れた笑い方をしないで。
「ひゃ、ちょっとサンジ冗談でしょ?」
私のお腹に冷たいものが触れて、
それがサンジの手だとすぐわかった。
「ね、サンジッ!?」
「...。」
「お、ねがぃっ、やめて!」
どうして?
私は色気もなにもないんでしょ?
もうこれ以上傷つきたくない。