第8章 一夜限りの夢の宴
「こんなもんだ。まあ君は海の男だ、水の抵抗とかちゃんと知ってるだろうし簡単に……って龍水?」
「あ、ああ!!実に見事な手際だった!」
ぼうっとする龍水を案ずる蒼音に、龍水は笑ってみせた。
「流石に覚えが早かったな」
蒼音がそう褒める。あの後、蒼音にコツを教えてもらった龍水は、沢山金魚を取りまくり。これ以上は営業的にちょっと、というところで金魚を戻して屋台を後にした。少し悩ましげな龍水に、蒼音がどうかしたのかと思いつつ見ていると。
「……ッッ!!はっはーーー!蒼音!!決めたぞ、次はアレだ!!」
龍水が急に元気を取り戻して指さしたのは、射的。その景品の中には、大きなうさぎのぬいぐるみがあった。
「へー、いいじゃん。面白そう、射的はやった事ないし」
蒼音が笑う。どうやら龍水の狙いには気付いていないらしく、他の景品を確認している。
「へえ。お菓子とか普通のもあるけど、一等とか上の奴が凄いね?猫じゃらしラーメン一年食べ放題券に、掃除機に冷蔵庫、千空デパートの服どれでも一着。ポイント制度で、高得点のに当てる程良い奴を選べるのか。流石科学王国、なかなか景品が《唆る》ね」
蒼音がそう千空の真似をしている中、はっはー、だろう?と龍水がコルク銃を構える。一回で三発。奇しくも、蒼音のクレーンゲームと回数は一緒だ。
「で、龍水は何狙うの?君ならどれも持ってそうだから、そうだな……って、ん?」
蒼音の目の前で、龍水が第一発目を放つ。最もポイントの高い目掛けて撃った後、カチャリとコルク玉の次弾を装填。
「え、龍水?なんか慣れてるけど、射的やった事あるの?」
驚く蒼音を他所に、ぬいぐるみ狙いの龍水は更に的に向かって放つ。二発受けて傾く最も重く難解な的を、狙う。かつて蒼音がしたように、三回。シュミレーション通りに撃つと的がコトン、と落ちる。
「すげーーー!!!」
「え、一等狙い!?」
間近で見ていた科学王国民が集まって来た。一等何を貰うのだろう、と皆がワクワクする中——
「あのうさぎが欲しい!!!!!」
「は??」
店主とギャラリー含めた全員がポカーンとした。別にそれなら一番難しい的である必要は無いのだが……