第8章 一夜限りの夢の宴
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「あれ、千空ちゃん?あれってまさかの〜?」
「龍水と蒼音か。ほーん?軍師サマも、たまにはご褒美ってか」
ザッザッ、と屋台の間を掻き分け歩く一際目立つ格好の二人組。
「はっはーーー!!流石は蒼音だな!?実にいい趣味をしているぞ!!」
バッシィィイン!!と指ならしする龍水。
黒い軍服にネクタイ、軍靴らしきブーツまできっちり揃えてある。ボタンや襟元などに入ったラインは全て金色。はためくマントは中地は赤色で、腕章も赤。差し色まで考えた、龍水らしい派手さのあるデザインだ。頭にはトレードマークのいつもの黒い船長帽が乗せられていた。
「そう?いいのが《たまたま》あっただけだが。まあ龍水君が気に入ったなら良かった」
対して蒼音は、白銀の髪の毛を前髪横の毛を少し残しポニーテールに結わえていた。陶器の様な白い肌が夜闇に映える。フランソワのスタイリングで、クール系の印象に様変わりしていた。龍水と同じ様な黒軍服でマントにズボンだ。差し色は青で統一し、ネクタイや腕章は彼女の瞳と同じだ。
龍水と違い、マントは左肩にのみ掛かる形。長めの紐がマントのない右肩に付いている。帽子は船長帽だが、龍水より小さい物を斜めに王冠の様に被せていた。
突然の二人の軍服船長帽ペアルックに、皆見蕩れている。自然とその威厳ある服装と風格で、道行く人が脇に避けた。
「軍師!テメー、今日はライブも無しだったな。龍水と仲良く遊ぶってとこかー!?」
「あ、千空。まあね。お祭りデートだ」
茶化したつもりが、すんなり認めた蒼音。『お?』と千空とゲン、龍水その他面々が固まった。蒼音が、あの天邪鬼で嘘つきの権化が。思いっきり惚気けた……??
「龍水。息を吹き返せ、さもないと他の男と遊ぶぞ」
顔の前でひょいひょいと手を振られて、ハッ!!と龍水が飛ばした意識を戻した。
「はっはーーー!!貴様のエスコートをするのは俺に決まってるだろう!?他の男になど渡さん!!」
そう言って仲良く屋台で綿あめを買う二人。
「蒼音ちゃん、やる時は本当にやるよね。ちゃんと服までお揃いで用意してさ。龍水ちゃんと船出前に思い出作る、最後のチャンスなんだもん」
しみじみと仲良く屋台を周り歩く二人を見ながら、ゲンが呟く。
「そうだな。まあ仲良しなこって」
千空も笑いながら見守った。
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