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二人の航海者

第8章 一夜限りの夢の宴


無事に引渡しが他の面子で行われ。店での着替えも終わり、男子禁制の看板が取れた頃。

「ありゃ、ニッキーちゃんか」
ニッキーと龍水が会話をしている。どうやら、本当は着たかった赤いワインドレスの服を着させようとしている。しかし蒼音としては少し困った。

誰にも見られずこっそり着替えて、後で龍水に【危険物】を渡すつもりが……先客が居たとは。ニッキーはきっと着替える所を他者になるべく見られたくないはずだ。蒼音の着替え場所が無くなってしまう。龍水がフランソワを呼び付け、ニッキーが着替え始める為に一旦場を離れた。

仕方が無い。今しか無いのだ。蒼音は恥ずかしさを我慢しつつ、ニッキーにバレないように少し店から離れた所まで龍水を追跡した。

「誰だ?さっきから尾けてきているのは」
龍水が振り返る中。目の前に現れた人影に、目を見開いた。

「やあ龍水。この私の尾行に気付くか。やるね」
「なっ、蒼音……!?俺に何か用か?」
いつも自分から構ってばかりの蒼音が、突然目の前に居たのだ。ズザァッ!と若干後退りして構える龍水に、蒼音はくすくす笑う。

「別に?はい、これ。船長帽とよく合う奴がたまたまあったから拝借しておいた。君も作業したんだから、これくらい受け取れ」
「……?なんだ、これは?」

「作業報酬だ。後で開けろ。広場で集合な」
それだけ告げて、蒼音が絶賛着替え中のニッキーに出くわす。ニッキーの叫びが響いた。

「蒼音!?アンタ……!」
「ごめん、ニッキーちゃん!事情があるんだ」
蒼音が言ってごそり、と何かを取り出した。聴こえないボソボソ声がした。ああ、成程ね、とあのニッキーがさらりと納得。その場に居ることを許した。

「………?何故だ?」
疑問に思いつつ、龍水が【危険物】と書かれた謎の袋の中を開けると。

「————!!フランソワっ!!」
「はい、龍水様」
スッ、と執事のフランソワが現れた。龍水が満面の笑みで告げる。

「はっはーー!フランソワ、スタイリストとしての仕事追加だ!!やるな蒼音!?確かにこれは危険物だ!!なかなか良い意味で俺を驚かせるな!?」
喜びながら、袋の中身を見詰めた。きっとこれを作ってくれた、最愛の人の姿を思い浮かべて。
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