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二人の航海者

第8章 一夜限りの夢の宴


「これ、もしかして千空君に作ってもらったの?」
「そうだよ。昔は夏休みの宿題を代わりにやれ、なんていう無粋な依頼が多くてな。夏休み最終日は夜通し五十分作業しては十分仮眠を繰り返したんだ。少しでも横になって寝た方が経験上効率が良いのでな。じゃ私もこれで今から休む!!」

敢えて杠復活のタイミングを見計らい、周りに後で起こせと声をかけ、横になり全力で休む蒼音。主戦力の一人である自身が積極的に休む事で、杠も休憩に入りやすい空気を作った。いつの間にかカーテンで区切られた仮眠用ベッドスペースまである。カーテン前に置かれた砂時計を前に、ありがとうと杠が笑った。

そしてパーティー前日の夜、深夜。
明日の開催を前に、何とか夜を徹して作業すれば行ける目処が立った。残る作業は高度な技術が必要な物ばかり。必然的に杠と蒼音の手工芸ツートップが居残りする事になった。憂き目にあう二人の姿を前に、何も出来ない大樹が歯噛みした。

「あーあ、テメーが超絶指先が器用な男だったらなー、《プロデューサー》がこんなの見たら即倒れるな、こりゃ」
千空のセリフに、大樹が駆け出した。この新世界に、そんな存在は一人しか居ない。

******
睡眠は逐一、取ってはいる。だが一日限りの徹夜ならともかく、連日ずっと働いての徹夜はなかなか厳しいものがある。適宜仮眠するも、やはり足りない。

「痛っ……」
「杠ちゃん、大丈夫か?」
睡魔に襲われ、腕を刺した杠。心配そうに蒼音が声をかけるが、彼女もまた疲れでせっかくの美しい顔にクマが出来ていた。うつらうつら、としつつ何とか会話しながら意識を保つ。

「うん、大丈夫……え」
突如、二人の前にひとつの影。

「お目覚めかな、二人とも」
「龍水!」
現れた元許嫁の姿に、蒼音が顔を輝かせた。どうやら大樹がヘルプを頼んだそうだ。

「夜中にいきなり叩き起したかと思えば、貴様らを助けてくれの一点張りでな。全く、あの七海財閥の御曹司をアゴで使うとは」

「龍水君、助かるよ。来てくれてありがとう。君の腕なら朝の引き取りまでに終わるだろう、この三人で交代制で休んで行くぞ!」
手始めに自分が休みに行く蒼音。龍水と杠が本音で話すのを、身体を休ませつつ聴いていた。
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