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二人の航海者

第8章 一夜限りの夢の宴


「そ。服に気を遣う欲望よりも、《面倒臭い!ラクしたい!効率重視の欲望》が勝つんだ。——フランソワさんっ!!」
バッシィィイン!!と蒼音が指を鳴らす。

「はい、蒼音様」
ザッ!!と現れたフランソワ。執事をもはや龍水レベルに気軽に呼び付ける蒼音。

「えーと?なんで龍水ちゃんの真似?ていうか龍水ちゃんの執事だよね、フランソワちゃんは?」
ゲンの指摘にまあね、と蒼音が答える。

「何となくだよ。龍水の執事だけど、フランソワさんとは長い付き合いだからこんなもんだよ。フランソワさん。龍水君の事だ、何か船出前に企んでるだろ?」
「はい。龍水様が船の竣工記念と送別会を兼ねたパーティーが出来ればと。皆様が開いて下されば、あの方も惜しまず投資されるでしょう」
だ、そうだ!!とにっこり情報を聞き出す蒼音。

「ククク……いーのか、軍師、フランソワ!?そんな情報渡して!?」
「龍水君の為にもなるからね」
「はい、蒼音様の仰る通りです」
こうして魔法のかかった一夜の宴、『シンデレラ・パーティー』が開催となった。

******
開催三日前。総勢百人以上もの大勢の参加者を出したのはいいが、特注品の衣装オーダーが多く、杠手工芸チームが毎日馬車馬の如く働いていた。最も手の早い杠に負担がかかるのは必然の流れだった。

「杠ちゃん!手伝うよ」
休みなく織機とミシンが動く中、蒼音がデパート千空へとヘルプでやって来た。
「え、でも蒼音ちゃんもライブの予定と準備が」

「予定消した!出航手前にでも記念で歌えばいい。今回の祭りのメインは私の歌ではなく、皆の着飾る姿だ。ならそっちに時間をかける!!これでも元武家の出だからね。武家の女は家を守れだかなんだかでな、手芸ならやれるさ」

ミシンを手際よく動かす蒼音に、ありがとう、とそちらを任せて杠は織機へと取り組む。杠と蒼音を中心に、他にも針仕事のヘルプに入る面々が日に日に多くなった。

パーティー前日にも杠が倒れたが、その穴を現状杠に次いで手が早い蒼音が何とか埋めた。
「杠ちゃん。休むのも仕事のうちだ」
コトリ、と蒼音が砂時計を出す。サラサラと落ちてゆく砂に、杠は目を丸くした。
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