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二人の航海者

第8章 一夜限りの夢の宴


手洗いなので『オシャレしたい欲』より『面倒なのでサボりたい欲』が勝つ。蒼音は歌の演出としてイメージを作る為に服を使う。だから分かるのだ。欲望龍水や服を必要だからと割り切って使う自身はまだしも、他の人達が購入するだろうか?自分の様な着る場所も無い服を。

(まあ、普通に売れればいいけど……)

残念ながら軍師のカンは当たってしまう事になる。

******
「はーい、じゃあ今日の反省会始めるよ〜」
レストラン・フランソワにて千空達チームがどんよりした空気でテーブルを囲んでいた。原因は杠の服が売れず、目標金額に届かなかったからだ。龍水陣営で働きつつも千空陣営の味方でもある蒼音もやっぱりな、と頭を抱えていた。杠の服が売れなかった事に不思議がる面子に、蒼音がすっと挙手して発言権を求めた。

「おー、軍師。何かあんのか。そういやテメーだけセールに乗り気じゃ無かったな」
「フフ、よく覚えてるね千空君。私は歌手だから服には気を遣うし、ライブ用の服には杠ちゃん起用してデパート千空にお金入れてたからね。私や龍水君は例外。他の人は服はあまり買わないんだよ、このストーンワールドじゃ」
どゆこと?と司会のゲンが掘り下げる。

「私は『ライブ』っていうみんなに着て見せる場所があるでしょ?でもみんなはそういうのが無い」
「あー、成程ねー!」
それだけで察したゲン。他の面子が分からない中、フランソワが料理を運んできた。

「フランソワさん。お疲れ様です」
「いえ、蒼音様こそ。よろしければ、あちらのテーブルの方に今回の件について尋ねてみると良いかも知れません」
フランソワの言葉通り、別テーブルの南やコハク、ルリ達の集まる女子会へ参加する。案の定、蒼音と同様の意見が出た。

「彼女達の言う通り、良い服を着てもこのストーンワールドでは土とか砂で直ぐ汚れる。だから私もライブの良い服は使い捨てなんだ。千空君。直ぐ汚れて、洗うのに手間と時間かかる性能抜群の高値の白衣。性能は劣るし汚れはするけどちょい洗えば何度でも着れる安物の白衣。選ぶならどっちだ?」

「あー、それなら後者だな」
女子会メンバーの話を理解出来ずゲン以外の男子が撃沈していくのを前に、蒼音が補足した。
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