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二人の航海者

第5章 秘密の会


「まあアレだ。三回普通のオプション追加してねーチケットを買えばいいんだよ」

「そうそ~~!隠しオプションは『隠し』だから中身はシークレットだけどね~。なんでも特注品のライブグッズ作ってくれるらしいけど、どんなのだろうね~?でもちょーっと問題があってね…。そもそものチケットが高いからなかなか出せる金額じゃなくて【最初の購入者】すらいないんだよね~。さすがに値下げしないと駄目かなー」

千空の助太刀で龍水の気が逸れた隙に肩を離してもらい、生き返ったゲンがペラッペラの口上で購買心を煽る。恐らくここで龍水に止めさせて、値下げさせずに【最初の購入者】として売りつける算段なのだろう。

するとバッシィイイン!!!と龍水が右手を鳴らす。しかも三回。めちゃくちゃうるさいので思わず二人がひいっ!と耳を塞いだ。

「フゥン、三回だな!?その程度安い買い物だ!!
むしろ値上げしろ!蒼音の曲を!俺の嫁候補の歌を!こんな安値で売るな!!!」

「まさかの値上げご希望!?」
千空とゲンが降って湧いた交渉に反射的に叫ぶ。

「つーか、嫁候補って。まだ船どころか石油ねーんだぞ。気が早すぎねーか?」
「あー、うん。俺らが舐めてたよね。蒼音ちゃんのブランド力というか。龍水ちゃんの強烈過ぎる位の蒼音ちゃんファンっぷり……」

普通の人なら相当頑張らないと届かない値段にしたのは自分達だ。これ以上値段を上げたらむしろ今まで司帝国で無償で歌っていた蒼音の方が『そんなのいいのに……!止めたまえよ!!』と泣くだろう。

蒼音は司帝国の転覆も狙ってはいたが、基本的に根はとことん無欲だ。他人の為に働く事、他人の笑顔を喜びとする。STONE WARSに協力したのも、みんなの『血を流さない』千空達のやり方に共感したからだ。

なので欲望の権化の龍水とは実は真逆なのである。私欲という物がまるで無いので、今回のライブ代金も多くを船の石油代として寄付する気らしい。千空達のドン引きをスルーして龍水がストン、と席に座り足を組んだ。
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