第5章 秘密の会
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「Aonnさんの生歌を独り占めチケットオォオ!??!!」
『ゲン家会』の翌日。真昼間の科学王国に、突然降って湧いたイベントに対する大歓声が響いた。
「あ゙ーそうだ!あの天才歌姫『Aonn』サマが、たった一人の為に一曲。購入者のド真ん前で歌おうってやつだ!一日につきおひとり様までの限定販売だ!!」
千空が盛大にマイクで宣伝する。スピーカーで大音量で流れる宣伝に「ひぃー」と蒼音は半泣きだ。 元々はみんなの癒しになればとタダで毎日司帝国で歌っていたのだから、突然値札が付くのはやはり気まずい。
「なんとなんとー!!ジーマーでゴイスーな追加オプションもあるよ~★歌う曲のリクエストが出来ちゃう権利と、サイン色紙権、更になんとー……?旧世界で未公開の楽曲のリクエスト権まで!!大盤振る舞いだよ~!!これは唆っちゃうよね~!」
千空とゲンのプレミアム感マシマシの宣伝文句にオオォオオオオ!!とファン達が舞い上がる。 私の3700年間脳内で考えた曲がァァァ!未公開扱い!やめろ!と言いたいのを抑えて蒼音はハハ…と笑っている。
「すげーー!!値段は!?」
「ぜってー買いてぇ~!!」
「真ん前とかVIPじゃねーか!いくらなん」
「《ピーーーーー》ドラゴだ!!」
「たっっっか!!!!」
ファン全員の目玉が飛び出た。だよね!そうなるよね!でもひとりの人に捧げる歌だからあまり安く出来ないんだよ、申し訳ない本当にごめん!!と蒼音が千空のつけたドイヒーな値段にフォローを入れる。
「ちなみに追加オプションはリクエスト権が《ピーーーー》だ!!サイン色紙権が《ピーーー》で新曲リクエスト権は《ピーーーーーー》だ!!!」
「全部高すぎ……」
全員絶望している。もはや全て値段部分の音声が『ピーー』になっている。
「ごめんな皆?船の石油の為なんだ、ドラゴの為なんだ、あこぎで本っ当にごめん!!」
蒼音本人が申し訳なさMAXで正直に謝罪している。その必死の姿にファンも何とか頑張ろう、という気になる。俺らもリクエスト権とか色紙とか追加オプションは無理でもチケット券だけなら何とか…!頑張ってドラゴ貯めよう、と意気込むファンたち。