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二人の航海者

第5章 秘密の会


その眼差しはとてもあたたかく、龍水以外はみんな蒼音の本当の気持ちにとっくに気付いている。だが。蒼音は背後で自分のしてきた所業よりも遥かにどす黒い謀略の渦があるとはまだ知らない。

******
「は~いじゃあメンバー全員揃ったところでいこっかー!恒例の『ゲン家会』~~!!」
「あはは?確かに恒例にはなってるかも」
「わー、ぱちぱちーー」

ゲンの初めの挨拶に、律儀に返す羽京。そして蒼音が口でテキトー過ぎる拍手をする。これはあさぎりゲンの家で定期的に開かれる会である。読み方は《げんちかい》。これなら一度聞いただけでは分からないのと、単純明快だからと蒼音が名付けた。いつも【現地集合】と言って集まっている。

特徴的なのはメンバー三人固定な所だ。ちなみに、ご飯などの時もこのメンバーで一緒だったりする。

ひとりは主催者のあさぎりゲン。メンタリスト。
ひとりは西園寺羽京。元ソナーマン。
そして最後に紅一点の六道院蒼音。天才軍師。
一見して共通点の無い彼らに、一つあるのが『他人の感情を慮る事』である。

エンターテイナーであるゲン、蒼音——歌手名『Aonn』はその場の空気を読み、皆が不快にならない様に発言したりする。羽京はあまり本心を表に出さず、我慢して皆の意見に沿った行動をする。対処法こそ違うが、本音を隠して皆の感情を優先する、根本的な所が似ている。その為に自然とつるむ様になった。

元は蒼音が旧司帝国時代、羽京が自分と同じ『他人の幸福を願う平和の理想家』と見抜き、裏切りを企みつつ仲良くしていたが、そこにゲンが加わり、現在の形に至る。で、今回の議題は。

「今日のは明らかに龍水対策だよね」
即座に察した羽京がズバッと思った事を言う。いつもは笑いながら穏やかに切り抜ける彼としても、周りが同じタイプな上に、普段の雰囲気に反して実は口が固く秘密は守る二人だから話しやすいのだ。

「そーそー!蒼音ちゃんがジーマーで大ピンチー!!」
「ゲン君。絶対楽しんでない?分かるぞ私には。こちとら、あんな爆弾発言を公然とされて内心どれだけビビった事か……!全くクソ無粋な」
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