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二人の航海者

第4章 春の嵐


「本当か!?働く!!働くぞ俺は!具体的には何をすれば良いんだ蒼音!?俺は貴様が欲しい!!」
必死である……見てる方が痛々しい程にこの悪女に惚れ込んでいる。可哀想過ぎる。 

「フフ、簡単だよ。私は軍師だ。故に、【仕事の出来る】人間が好きでね。……龍水君。君がちゃんと仕事をして今回の航海を成功。Dr.STONEを手に入れれば——そうさね、君の恋人どころか、結婚してやろう」 

「はっはーー!!それならやる!やるぞ!!【ただの契約した許嫁】から、貴様を【本物の嫁】にしてやる!!」
バッシバッシバッシィィイン!!と三連チャンでテンション爆上げで指鳴らしをする龍水だが……肝心の蒼音はジト目だ。

「……?おい、貴様のその目はなんだ?」
龍水が訝しむ。 
「龍水君。考えてもみたまえ。まず前提として七海財閥と我が六道院家は無くなった。その財産も名誉も全て、だ。違うかい?」

「………?ああ。………!?まさか」
龍水がそこで目を見開いた。蒼音が意味深に頷く。

「私が龍水君の家の上層部を抑える役目も。龍水君が私の歌手活動に対する金銭的援助をする契約も無い。利害関係すら無いのだ。家同士の結び付きがあってこその許嫁だが、それも無い。君は資産だけでなく、私の許嫁というポジションすらない。つまり!!私の周囲はガラ空き!攻め放題★誰が私に惚れても許嫁のカードは切れないのだよ。龍水君。君には防御力すら無いのだ!!」 

そう言葉を並べ立てるマシンガントークな蒼音に、龍水の心のHPはゼロである。 

「くっ……!何だと!?最も欲しい美女と結婚出来る俺唯一の権利すら無いとは!!今は世界中の所有権が手に入ると思ったが、それだけは残っていて欲しかった……。クソっ!!!」 

ダンダンと子供の様に地面を手で叩く龍水。もう周囲はあーコイツ阿呆だな、という目になっている。アホな茶番だが、取り敢えず最後まで見守るしかない。結末は予想出来るが。
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