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二人の航海者

第4章 春の嵐


「はっはーーー、蒼音!貴様は実に見る目があるな………っておい蒼音!!貴様、俺の告白は!?!この俺の一世一代の告白は!?!おい!!何処へ行くーーーーーー!?!」

龍水が調子に乗って目を離した隙に、ドウッ!!と凄まじい勢いで逃げる蒼音。謎に素早い動きである。どう見ても本気で逃げている。が、龍水も負けていない。これでも帆船を乗り回し、個人ジムで鍛えて……

鍛え…………
てる筈が、何故か蒼音に追い付かない。蒼音が隠れたり色々撹乱するので、一々正直な龍水が引っかかって距離が縮まらない。二人が謎過ぎる追いかけっこを船周辺でグルグルするのを周囲は唖然として見ている。

やがて龍水が地面に膝をついて倒れ込んだ所で、蒼音が目の前に太陽を背負うかの様に逆光を浴びてザッ!!と立ち塞がる。もはや完全に演出が悪役である。龍水が息絶えだえに告げた。

「くそ…っ。俺は……!貴様の、全てが。欲しい……!貴様だけだ…、貴様しか居ないのだ。心から…欲しいのに……っ、唯一手に入らないのは…………!」 

そう悔し涙を流す龍水。周囲は鬼ごっこさえ無ければさっきよりはマシで良い台詞なのだが。と思いつつ、息すら乱さずに凛と無表情で立ち塞がる蒼音を見た。蒼音は龍水の台詞にしばし沈黙し——ニヤリ、と。悪女の美しい微笑みで言った。

「龍水君。それだけは無理だね。返事をする以前の問題だ。無粋にも程がある。そもそも君、今の状況を分かっているのかい?」 「え………」
こっちはこっちで、派手に公開処刑である。周囲のメンツは、今度は龍水の方が可哀想に見えてきた。

「な、何故だ!?というか今の状況というのはどういう事だ!?教えろ!!」
ガバァ!!と龍水が地面から顔を上げる。

「いいか?君と私とでは復活の方法すら違うんだ。龍水君。君は石化した後に意識を飛ばしたな?そして、復活液で今日起きた。違うかい?」
「ああ、違わん!あんな暗闇なぞ詰まらんからな。視界すら無いなど耐えきれん!それがどうかしたのか!?」 

蒼音が言いたい事を察した周囲がああ……と龍水を憐れむ目になる。軍師の手にかかれば、この欲望の塊ですら手のひらの上で転がされるのか。
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