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二人の航海者

第4章 春の嵐


「龍水。テメー大丈夫か?感動の再会で感情どっかに落としたのかよ?」
ニヤニヤと千空が茶化し、なになに?と嵐で避難していた皆がテントからわらわらと出てきた頃。龍水がニヤリと笑い蒼音の握手をガン無視で右手を挙げた。イヤな予感。当たるぞ、長年龍水と付き合ってきた軍師のカンは!?

「はっはーーーーーー!六道院蒼音!!会いたかったぞ。俺は貴様の『心』が、絶対に欲しい!!蒼音、貴様を必ず手に入れる!!女は皆美女だ。貴様も美女だ。だが貴様が世界で最も美しい女だ、絶対に欲しい!!愛している!!!」

バッシィイイン!!!と派手に指鳴らしする龍水。
「ぬーーーん……」
まさかの公開告白である。周囲の科学王国民全員で唖然とした。これは断りづらいし、酷い。告白文も微妙だ。欲しい連呼や皆美女、のくだりは要るのか?せめて愛してるとかだけにすればいいのに……  

これではあまりに蒼音が可哀想だ。お膳立てをした千空ですら、『龍水テメー、再会で高ぶる気持ちは分かるが。時と場所と台詞考えろよ』とドン引きだ。周りの心配を他所に、【龍水の操舵】のプロである蒼音がにこやかに告白スルーで龍水の右手のヒビに視線をやる。

「おや?龍水君、その右手のやつは石化解除の時のヒビかい?珍しい模様だね」
「ん?ああ!!どうだこの模様!?」
バッシィイイン!と気前よく更に指を鳴らす龍水に、花開く様なあたたかい微笑みで蒼音が笑いかけた。

「へー、いいじゃん、それ。格好いい模様だし。君の手を鳴らすクセにピッタリだ」
その台詞に、龍水の記憶の中にあるワンシーン。初めて出逢った時の言葉が重なる。世界を船で渡る、と宣言したあの見合いの場で、彼女はこう言い放った。

『へー、いいじゃん、それ。面白そう。なかなか壮大だし』
変わっていない。彼女は少しも変わっていない。これは復活したかいがあるものだ。

「はっはーーー!そうだろう!?俺に似合いのヒビ、いいや勲章だろう!?」
龍水が派手にバッシィイイン!!と指を鳴らすと、ハハ、前もそれやってたけど更に派手になっていいねえと褒められる。龍水からすれば、蒼音は喜ばせ方が唯一分からない存在だ。花も高級品もリゾート地に連れてっても喜ばない。だが、どうやら向こうは龍水を喜ばせる天才らしい。
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