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二人の航海者

第4章 春の嵐


「ぬーーーーん……」
その復活を眼前にした南以外が半目になる。
「でしょ?」
龍水の性格を危惧していた南の発言と違わず、相当クセがある様だ。千空は確かに蒼音の言う通り、欲望まみれの奴だなと理解した。 

「てか千空、なんで秒でかけてるのよ!?」
南が泣き出しそうな声で抗議する。
「ククク、腕重視に決まってんだろ」
あと軍師サマのご推薦もな、と心中で付け足した。

******
千空が絶賛製作中の帆船を見せつつ、これで地球の裏まで行けるか尋ねたが、その最中に龍水の予言通りメイストームに襲われる。雨に降られる中、千空に石油の打診をしている龍水。スッ、と濡れるのも厭わずその背後に立つ人影。それに気付いた千空が派手に大声をあげた。 

「よーーー!天才軍師サマのお出ましじゃねーか!?テメーのご希望通り、許嫁の腕利き『船長』復活させといたぞ~~!?」
「…………………ッツ!?!」

軍師!?いや、まさか……!そんな事があるのか?だが、俺を許嫁と呼べるのは。そんな天才は、俺の愛した人間は………!俺の知る限り、この世界にたった一人だけだ………!! 

龍水が急ぎ振り返れば、そこに居た人影がニッと笑い被っていたフードを取った。見慣れた白銀のロングヘアが風にあおられる。

「へえ?流石は千空君。いい仕事だ。彼は腕利きだからね、素晴らしい人材の選択だ」

そこには懐かしき大事な花があった。かつて亡くした、海の色の瞳のこの世で最も美しい、高嶺の花。心から愛してやまない唯一無二の花。他でもない。愛する彼女が、自分を推薦していたのか。歓喜で思わず龍水が笑ってしまう。

「フフ、奇遇だね、龍水君。3700年振りか。大昔いばら姫の私を助ける、とか何とか言っていたが……私の方がどうやら眠りこけた君を助ける、『王子様』だったらしいな」

六道院蒼音が龍水を見据えて微笑んだ。ちょうど嵐が止み、二人の再会を祝福する様に晴れ間が見えてくる。太陽の光が、龍水と蒼音の髪をキラキラと照らす。金色でまさしく太陽の様な龍水と。銀色で、月光の様な光を放つ蒼音。 

「私は今ここで軍師として主に頭脳労働をしていてね。よろしく頼むぞ、《船長》」
にこやかに差し出された、握手の右手。白魚のような細く綺麗な指を見詰めて、龍水は固まっている。
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