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二人の航海者

第3章 心のフィルム


蒼音は世界的歌手で、司同様に顔も知られた著名人だ。武力も大して無い。故に警戒されずに司帝国で生き延び、こっそりその知略で国内で力を付けた。非戦闘員の復活者も必要だと進言し、あさぎりゲンや記者の南を復活させたのも蒼音の仕業である。

司帝国はまだハッキリとした形が無く、千空の仲間だった大樹、杠のみだった。蒼音が司の目の前で復活した事から、千空の手先で無い事は確定。実質『司帝国の初めての国民』であり、司帝国の四人目にして初期メンバーである。

復活液の製造やら、料理面など細かい作業は蒼音の担当だ。料理はフランソワに鍛えて貰ったのが活きた。そして蒼音の本領である歌唱力で、ストーンワールドの数少ない【エンタメ要員】として活躍。

後に、千空達と組んで歌姫寝返らせ作戦に参加。ストーンウォーズを策謀で科学王国の勝利に導き、今はこうして『軍師』としてその知略で国を支えていた。彼方を見つめる蒼音に、千空が笑いながら告げる。

「ククク、『王子様』なあ?リアリストなテメーからいちばん遠い言葉じゃねえか!」
「まあね。でも本人がそう言うから仕方ないだろう?あと一応彼、許嫁になってた仲だから」

ただの契約で結ばれた許嫁だから、3700年は重荷だったんだろう、と笑う。そこまで言って、眼下の船が目に入った。今作っているのは帆船だ。風の流れを読む昔の船。船長は【必ず】復活させないといけない。
——現代の日本で帆船を乗り回す腕利きの船長。

「おい、どうした軍師」
少し千空が心配したように声をかけてきた。私情を挟むのは軍師としてはどうかとは思うが。六道院蒼音として、彼女は告げた。

「千空君。今作ってるのは『帆船』だろう?旧世界での経験者はあまり居ない。せいぜいが海洋系学校の講師とかで、カリキュラムに入ってる程度だ」
「軍師テメー、そっち方面に詳しいのか?」

「いや。詳しいのは私じゃないよ。居るんだよ、一人。現代でめちゃくちゃ帆船乗り回してる、実戦経験豊富な、【世界の全てが欲しい】と言う欲望の塊の輩がね」
ふっ、と微笑む蒼音に千空が目を見開く。先程話した、欲しがりの許嫁であると勘づいたのだろう。
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