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二人の航海者

第3章 心のフィルム


「やっぱりね」

本来の蒼音は、旧司帝国跡地にある自身の寝床で目を覚ました。やはり夢か。それも、あんな昔の。なんて懐かしい、心のみに刻まれた風景なんだろう。布団から起き上がり、外をぶらぶらと闊歩する。

「あれ、千空君。早いね?」
そこには、眼下に広がる景色を眺める科学王国の主。石神千空の姿があった。

「よー、軍師サマ。朝から策謀中か?」
「はは、流石に私もこんな早朝からはしないよ。とっくに船の作業の人員割り当てとか諸々作って配布したし。軍師の仕事は、暫くお休みかな」

千空の座る岩から少し離れた岩に、蒼音も同じように座った。旧司帝国は、科学王国の色に染まり、今は大きな船やら色んな科学物で溢れていた。

「へえ?なかなかいい景色だね、ここ。いい具合に科学王国の風景が見える。【欲しい】って言いそうだ」
「軍師、誰だそれ。テメーの口癖じゃねえな」
千空がふと零した蒼音の台詞に反応した。

「うん。私の古い知り合いがいてね。世界を丸ごと欲しがる様な、欲望の塊みたいな子だよ」
「ほーん?そりゃまた、軍師サマの手でも動かすのは骨が折れそうなこった」
少し興味津々で聞きながら耳をほじくる千空に、まあそうね、と蒼音は笑う。

「私はとっくにもう起きてるというのに。あの馬鹿な『王子様』は何時になったら起きるんだか。寝坊するのもいい所だよ」
そう、呟く。

蒼音は、3700年前石像になった後も脳をフル稼働させた。その結果。まだ完全な独裁体制を築き上げる前の司帝国の奇跡の洞窟付近で自力復活した。

ピシッ……ピシシィッッ………!
パキィィィンンンッッ!!
「…………!や、やった………っ!!やったよ…っ、龍水……っ!!」
起き抜けに喜びのあまり思わずそう叫んだのはいいが。近くに目撃者が居た。

「君は。まさか自力復活者かい?その顔、もしかして歌手の『Aonn』かな」
「あ、はい……『Aonn』です。お見苦しい姿をお見せしました」

獅子王司が千空を殺し、ちょうど『奇跡の洞窟』に帰ってきたナイスなのかバッドなのかどうか分からないタイミングで起きた。せめて龍水の名前を叫んだ所はカットして欲しいが。
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