第3章 心のフィルム
「フゥン?貴様、どうせあの堅苦しい父親と伝統のせいで、家でも息が出来ないのだろう。なら俺が家から出してやる!永遠にな!!」
…………………………??
蒼音がよく分からない、と味噌汁に両手を添えつつ首を捻る。
「そんな籠の中の鳥とか、いばら姫とかか?救出される側か私は?深窓の令嬢は見た目だけだぞ」
「なんだ貴様、いばら姫って言うのは」
するとフランソワが『龍水様、いばら姫というのは』と有名な童話の粗筋を語る。眠りに落ちたお姫様を、王子様が助けに来てくれるお話。それを聞いた龍水がバッシィィイン!!と指を鳴らす。今ここで鳴らす要素あったか君?
「はっはーーー!要するに俺に【王子になれ】と言うことだな。蒼音、貴様はもっと正直になれ。本音を言え!貴様の王子様くらい、この俺がなってやる!!」
…………………オゥ……。
変な方に拗れたぞ。どうして君はそう暴走するのか。
「龍水。君、茨の道を切り開いた後はちゃんと聞いたか?キスするのかい、私の唇に」
「……………!?ゴフゥッゴフッ!!」
「龍水様!」
むせた龍水君の介抱をするフランソワ。言わんこっちゃない。龍水が赤面しつつ『貴様、なんて事を!』と文句を言うので『それが出来ないなら、茨の道を切り拓くのも無理だな』と蒼音は適当に煽った。地団駄を踏む龍水に、それを全く君は、と見守る蒼音。少し遠目で見守りつつ後片付けをするフランソワ。
あったなあ、こんな。あったかい日々が。
あった??あれ……
蒼音の視界がぐにゃり、と歪んだ。そうか、これは。