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二人の航海者

第2章 世界の歌姫の小さな一歩


本心ではあるが、契約結婚である事は隠した。嬉々として父親は縁談話を纏め、正式に許嫁に。七海財閥も思惑通りの縁談話を結べたと喜んだ。そこまでは計画通りだが——音楽の日に学校に来た所、龍水は蒼音の学校に転校。学校近くのマンションを丸ごと購入、そこに住むらしい。やる事の規模がデカすぎる。

「じゃあ龍水君はそちらの席に」
「蒼音!遅くなったが貴様の学校に来たぞ。これからは俺が貴様と共にいる!貴様は俺の嫁だからな!!」
先生の指示ガン無視で、指定席とは真逆の蒼音の席にズカズカと近づく。

「龍水君。わざわざ私の学校に転校したのですか」
普段のお淑やか令嬢の演技で訊くと、そうだ!と力強い返事。仕方ない。彼は言って引くタイプでは無い。

「申し訳ありません、先生。龍水君の席を私の隣りにして頂けませんでしょうか」
「え、ええ」
事情を察した担任が頷く。その後も龍水は席に座りガン見して来たが、ポーカーフェイスで切り抜けた。龍水が席を外した休憩時間に他の生徒が殺到する。

「凄いね!流石、蒼音ちゃん」
「あの龍水君と婚約出来るなんて将来安泰じゃん!」
「蒼音ちゃんの事大好きみたいだし!頭良いし綺麗だから龍水君だって好きになるよね〜。やったね!」

やったね!ではない。
殺られたね、である。

返事を濁す間に龍水君が戻ってきた。嫌な予感。当たるぞ私のカンは……!?
「貴様ら!誰の許可を得て俺の嫁に近付いている!?蒼音は俺のモノだ!!」
ドン引きした生徒達が逃げていく。だよね。普通引くよね。蒼音は心から同情した。その後も付き纏われ、挙句帰りには。

「は?」
お付きの運転手と一緒に蒼音は口をポカンと開けた。
「はっはーーー!俺のマンションのワンフロアを貸そう!出世払いで構わん。今から一緒に帰るぞ!!」

彼の車へ強制的に乗せられ、人攫いの様に高級マンションの前に連れてかれた。
「…………高そう」
そう零す蒼音にそうか?この程度見慣れてるだろうと平然とする龍水。

「龍水君。うちの家訓が『質素倹約』『欲を持たない』なんだよ。だから」
「欲を持たないだと!?何だそれは!」
クワッ!と龍水が目をかっぴらいて怒り、最上階の部屋に連れて行かれる。
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