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二人の航海者

第2章 世界の歌姫の小さな一歩


「フゥン?やはり同じ穴の貉の輩か。言ってみろ、その『やりたい事』を」
同じではない気がするが。と思いつつ、その【夢】を口にした。

「歌が、好きなんだ。曲を作り、歌詞を紡ぐ。それらを私が歌にして、皆に届ける。私の歌で、皆が笑うのを見るのが好きなんだ。縁談なんか結んだら、今より行動が更に絞られる。これ以上家に縛られるのは絶対にごめんだ」

ふと笑みが零れた。おかしな話だ。これまでの見合いの中で、最も嫌悪しぶち壊そうとしてたのに。蒼音が見上げると、見蕩れた様な顔をする龍水。まるで今ので私に惚れ込んだかのような。んん?今ので、私に?気の所為だろうか。

「決めたぞ!契約だ!おい貴様、俺と手を組む気は無いか!?俺と許嫁として契約を結んだ暁には、貴様のその音楽活動には一切口出ししない!貴様の家柄だと金銭面で苦労するのは目に見えてるが、俺が全部出そう!ただし貴様も俺の事情には口出しするな!!」

ほう?なかなか面白い提案じゃないか。

「なるほど、契約結婚だね」
ニヤリ、と笑う蒼音。料理を食べつつ自由に話した。

「ところで貴様。名はなんだ?」
名前くらいは知ってるだろう。契約結婚を申し出るなら尚のことだ。本当になんで自分でOKサイン出したんだ?蒼音は言葉は型破りでも礼儀作法は守る。対して龍水はこれでもかという程にそれらを無視していた。

「それで?契約結婚言い出すからには、君の方も家の事スルーして『やりたい事』があるんでしょ」
龍水も縁談で押さえつけられる存在だ。蒼音の頭脳でのお手伝いが条件だろう、と察しつつ聞く。

「俺はな、自分の手で海を渡るつもりだ!今はボトルシップを集めているが、それだけでは詰まらない!」
龍水がバッシィイイン!と指を鳴らす。あ、うん。見合いの写真のやつはコレだね。色々と規格外過ぎて驚かなくなってきた。契約許嫁の話を纏める。蒼音の話の飲み込みの速さが気に入った龍水は嬉しそうだ。

「それで?ボトルシップ、って帆船とかじゃない?そっち方面は私は詳しくは知らないけど、そういう昔の船を実際に作るの?」
「ああ!それで世界を回る!」即答する龍水。

《世界》。
自身なんぞには夢見ることすら叶わない、壮大な願い。思わず目を見開き、蒼音は笑った。
「へー、いいじゃん、それ。面白そう。なかなか壮大だし」
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