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二人の航海者

第2章 世界の歌姫の小さな一歩


「父さん。この子、私と同じ位の歳だよね」
そう確認する蒼音に、父親は頷いてみせる。

「ああ。お前と同じ学年だ」
「そりゃ女に限らず、人類全てにそれぞれの良さはある。個性もパラメーターの値も違う。けど普通言う?十歳でその台詞」
「その台詞、そっくりそのままお前に返すから。相手からの依頼書だ、『ウチの息子をコントロールしてくれ』って書いてるから読め!戦略を立てろ!!」

父親に手渡された、本来本人は見ない書類をパラパラーと捲り把握した蒼音が席から立ち上がる。

「父さん。サクッとぶっ壊すし、お付きの人は無しで。場所はいつもの所」
蒼音はそう言い去り、項垂れる父親が残された。

******
「蒼音ちゃん。七海龍水君とお見合いするって本当!?」
「私も聞いた!あれくらいのお家じゃないと釣り合わないもんね」
「蒼音ちゃん、すっごい綺麗だもん!」

音楽の授業では、唯一家に後ろ指を指されず好きな物を楽しめる。週一日レベルで学校に出現する蒼音に生徒が寄ってきた。七海財閥が息子を縁談話で押さえつける為に敢えて噂を流したのだろう。フフ、私にそういう勝負を挑むのか。小賢しい真似をと思いつつ、蒼音はいつもの儚げ美少女の仮面を被って答える。

「はい。皆様よくご存知ですね?でも私では、とても釣り合わないかと」
しんみりとした哀愁漂う微笑みで魅了する。

「ううん!パパから聞いただけ」
「蒼音ちゃんならこの子と縁談話結べるよ〜!」
「龍水君、いつも見合い話断ってるらしいね」
学校は良家の子供しか居ない私立で、行けば必ず他の家の話が出てくる。故に蒼音としては情報収集も兼ねているのだ。

「そうなのですか?」
蒼音は少し首を傾げた。元々見合い話を断る相手なのか?では何故今回は受けたのだろう。

「うん!初めて会う所まで行くのがもう無いって」
「私の友達も、昔綺麗な服着て行ったら凄く褒めてくれて好きになったのに、断られたって」
「不思議だよね。でも蒼音ちゃんは龍水君本人がOK出したらしいし、きっとタイプだったんだよ!」

なんじゃそりゃ?自身同様、見合い嫌いではないか。蒼音は相手に断らせてるが。しかし本人がOKサインを出した辺りが気になる。
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