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二人の航海者

第2章 世界の歌姫の小さな一歩


「蒼音。今回は本気でお前向きの案件だ。この令息は金遣いが荒い道楽息子だ。見合い相手に惚れこませ、何とかマトモにするのが向こうの意向だ。要するに相手の操縦だ。これが出来ればうちの人脈は更に広が」

「お父様とやってる事が一緒ですね」

スパーーーン!と斬り捨てられ半泣きの父。ヤケクソで見合い写真を指さす。

「いいか!?この七海龍水という少年はな!お前の大っ嫌いな『クソ無粋』なんだ!証券取引やレーシングカーの習い事をして億単位のお小遣い貰ってる欲望の塊だ。そんなのお前なら断れるだろう!?」

「確かに酷いね?どうせロデックスとか付けてるんだろう。腹が立つし受けて立とう。写真を貸したまえ」

無理やり見合いを受けさせる事に成功した父親はガッツポーズ。素の方の言葉遣いが出てるが、それだけ効果があったと言うことだ。普段質素倹約にさせてるのが項を制し……いや裏目に出てる気はするが。めちゃくちゃ敵意剥き出しである。本人は今回も断らせるつもりだが、とにかく他の家と結び付ければ家の体裁は固まる。頭はいいので、相手を立てて上手く懐柔するなりやってくれるはずだ。問題はその相手が今まで現れなかった事だが。

「へえ。この子顔は良いし女の子にモテるプレイボーイってやつだよね、お父様」
写真を観察する娘。父親はそうだ〜!お前も人のことは言えないがな!と顔を手で覆い泣く。

「目とか眉とかから気の強い性格は出てる。分かりやす過ぎて私ちょっと怖いんだけど。あと見合い写真で、何故全身で格好付けてるんだい?理解不能だな」
二つ折りの台紙を父親に見せる蒼音。そこには、右手を上げて指鳴らしをしながら、防波堤に足をのせてキメ顔している少年の全身写真。しかも明らか見合い用ではないその一枚しかない。

「お前のその謎の口調は……もう治らんな。他人の前では猫かぶるからいいとして。言っただろう?無粋だから見合い写真すらこれなんだ。だが七海財閥は知ってるだろう」
「海運業の王様で、グループ総資産は二百兆円。家柄はいいからコレでも女の子にモッテモテと」
お前もそうだがな!と叫びつつ父親は続ける。

「それだけじゃない。その子はこれが口癖でな。《女は皆美女だ》」
言うのも恥ずかしい歯が浮くようなセリフ。蒼音も流石にドン引きしている。
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