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二人の航海者

第10章 二人の航海者


それ故に、ずっと自分の気持ちを隠し王子様に愛していないと嘘を吐きました。嘘をつく度に、お姫様の瞳がどんどん曇っては本音から遠ざかって行きます。

そんな中、ある日。もうすぐ結婚式を挙げて夫婦になれるだろう頃に、お姫様と王子様を含めて世界中の人が石になってしまいました。石になったお姫様は、ずっと思考を巡らせられる事に気付きます。

《いつか、王子様にまた巡り会いたい》
誰にも聴かれない世界で、お姫様は愛を歌い。思考の海を渡る航海に出ました。

3700年後、無事に永き眠りから起きたお姫様は、王子様を迎えに行きます。婚約者という特別な立場を喪い、しょぼくれる王子様。お姫様は、これが出来れば結婚する、とひとつの壮大な航海の試練を課しました。地球の裏側まで、かつての謎の石化の光の謎を解く大航海です。それでも、この王子様なら、きっと出来ると信じて。

青年となった王子様は3700年前と違い、お姫様の為だけに編んだ、愛の言葉を紡ぐようになりました。皆に囁く言葉では無く、いつもの彼らしい派手さも無い素朴な愛。嘘つきで天邪鬼だったお姫様が少しずつ本音に向き合います。曇りきっていたはずの瞳が、次第に元の太陽の光を取り戻してきました。

そしていざ、船出の日。
もしかしたら、これが最後の別れになるかも知れないその日にお姫様は本当の気持ちを告白します。太陽の光を放つ瞳は、もう未来を恐れる事はありませんでした。

《本当は3700年前からずっと好きでした、貴方にまた会いたかったのです》と。嬉しそうにする王子様は、意気揚々と出航。無事に、試練を乗り越えてお姫様の元へ帰って来ました。

「結婚しよう」
跪く王子様に、お姫様は笑顔で答えます。
「はい」
こうして二人は3700年もの時を超えて、晴れて夫婦となり。末永く幸せに暮らしましたとさ。

おしまい、おしまい。
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