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二人の航海者

第10章 二人の航海者


「では、お二人の結婚式の為に新しい物語を」
神父の司の横に元巫女のルリが立った。二人の目の前で両手を祈るように胸の前で組む。龍水の不在に苦しむ蒼音の姿は、横でずっと見てきた。そんな彼女に何かしてやれるとすれば、自分にはこれしかない。ルリの穏やかな眼差しに、蒼音はああずっと私を心配してくれてたのか、と悟った。

「ああ!よろしく頼む!!」
「ありがとう、ルリちゃん。ぜひお願いするよ」
頷く二人を見て、すぅ、と息を吸った。その物語のタイトルは。

「千夜物語——【二人の航海者】」

******
むかし、むかし。歌が好きで、とても綺麗な声を持つ、美しいお姫様が居ました。ですが優れた頭脳を持つ高貴なお姫様が歌の道に行くのを、王様は許しませんでした。

「お前には才能があるのに、歌なんて勿体ない」
夢への道を家の長たる父に閉ざされ、憂鬱な日々を送るお姫様。すると新たな婚約者候補として隣国の王子様が現れました。お姫様は自分がとても高貴な身故に、家に縛られ夢を妨げられてきたのはよく分かっていました。これ以上は歌う時間も夢も奪われまいと婚約のお話を全て突っぱねました。

初めて隣国の王子様に会った、夏の日。
いつも通り突っぱねようとするお姫様に、王子様は契約結婚をしようと申し出ます。彼女の歌を、才能を伸ばし夢を叶える手助けをする。代わりに俺にも夢があるから、君のその頭脳で手伝ってくれ、と。

お姫様はそれなら、と頷き夢を叶える為に王子様の手を取りました。美しく成長した彼女は世界中に歌声の響く、歌姫へ。一方王子様は、親に反対された世界を船で渡る航海者としての夢を叶える事が出来ました。

二人は協力し合い、夢を叶えたのです。
女は皆美女だ、と常に色んな女性に言う王子様。
自身に向ける愛を信じられないお姫様は、彼に惹かれつつも気付かないフリをして、別の女性を送り付けます。きっと自分に囁く愛の言葉も嘘だろう、と。ですが、誰も王子様の心を射止める者は居ませんでした。

長い年月を経て、王子様の本気の愛に心を蝕まれすっかり虜になったお姫様。ですが慎重な彼女は、本心を告げた後に捨てられたら?別れたら?と考えるだけで恐ろしくてとても本音を言えませんでした。
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