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月が欠けた日から…

第23章 殺せんせーとカエデのこと


「あぐり!」

「ドジこきました。まさかあんな仕掛けがビューって。」

「まて!」

「これくらいじゃあなたは止められない気がして。」

(あと0.1秒早く気づいていれば守れた。触手を医療に使う訓練をしていれば救えた。どうして、気づく時間はたっぷりあったのに。殺す力を、壊す力をどうして誰かのために使わなかった。どうして、どうして!)

「私が殺したのも同然だ。」

「そんなわけないじゃないですか。私がそうしたかっただけ。それに、あなたなら殺されてもいい。そのくらい大切に思えるから。きっとあなたもそんな相手に巡り会えますよ。」

「君になら殺されても悔いは無い。だが、君以外にそんな相手がいると?」

「もし、残された1年あなたの時間をくれるならあの子たちを教えてあげて。あなたと同じあの子たちも闇の中をさまよってる。真っ直ぐに見てあげればきっと…。なんて素敵な触手。この手ならきっとあなたは…素敵な、教師に…」

ださい。ようやく気づいた。彼女の欠点は魅力でもあったんだ。残された時間を教師であることに使おう。あなたが見続けてきた生徒たちを。私の目で見続けよう。どんな時でもこの触手を離さない。

触手が聞いてきた。

どうなりたいかと。弱くなりたい。弱点だらけで親しみやすくどんな弱いものも感じ取る。守る。導ける。そんな生物にそんな教師に。時に間違い時に冷酷な素顔が出るかもしれない。でも精一杯やろう。彼女がめざしたことを。自分なりに。自分の得意なやり方で。
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