第23章 殺せんせーとカエデのこと
「あ、そうだ!今日買った新しいインナー見てください!」
「懲りませんねぇ。センスの無い服でまた女を下げなくても」
「じゃじゃーん!鬼柄チューブトップー!ちょっときつきつだけどいいセンスしてるでしょ!」
「にゅふーん」
「あの…やっぱし変ですか…?」
「ああ、いや!これは、その!」
(まさか、実験の影響で!?)
「触手さんは正直なんですね!」
「えっ?」
「どんな形にも変わるその手はあなたのなりたい姿を映す鏡なのかも。」
「私の…?」
「もしもあなたが平和な世界に生まれていたら頭はいいのにちょっとエッチでどこか抜けててせこかったり意地貼ったり偽らない優しい笑顔のできるそんな人になっていた。」
「あかり!今晩少し空きそうなんだけど食事でもどう?」
「そんなことよりお姉ちゃん、妙に声が明るいけど好きな人でもできたのかなー?」
「な、なにを!私婚約中よ!?」
「別にいいじゃん!外面だけいい横暴男なんて見切っちゃえばー!」
「あのねぇ。」
「まぁいいわ!お姉ちゃんの気になる人の話も聞きたいし!」
「じゃあ、OKね!」
「うん!ごちそうさま!」
「プレゼント?」
「ええ、首元が冷えるって言ってたからこれならカバー範囲も広くておしゃれですよ!」
「どうも…」
「お気に召さないのはわかりました…」
「ああ、いや、なんで唐突にプレゼントなのかなって。」
「あなたと出会って今日でちょうど1年。生まれた日が分からないなら今日をその日にしませんか?いっぱいお話聞かせてもらっていっぱい相談に乗ってもらいました。出会えたお礼に誕生日を送らせてください。」
「…いただきます」
「よかった!でもこれは渡せませんね、この壁がある限り。それに教師をやめてここで常勤するようにって柳沢さんが。結局私、前のE組の生徒の目に光をともすことが出来なかった。今のあの子たちにだって私まだまだ未熟で…。それなのに…」
いつわりの笑顔はいつの間にか本物の笑顔になっていた。