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月が欠けた日から…

第23章 殺せんせーとカエデのこと


「リラックスタイムは終わりだ、モルモット。実験台に登れ。実験開始だ。」

実験が終わる頃には体はきつく、血を吐き出した。

「想定内の拒否反応です。放置して構わないと。」

自分が生贄であること。死神が人ならざる存在に変わっていくこと。それらを感じながらも彼女は余計なことは何も聞かない。

「今日もお疲れ様でした!少し休んだらバイタルチェックに入ります。あとはいつもみたいにお話ししましょ!」

ただまっすぐこちらを向いて今日も彼女は平和に笑う。

(そうか、見るというのはこういうことか。)

「そうしましょう。学校のテスト問題は?」

誰にも姿を見せなかった伝説の殺し屋は見られることが嬉しいことだと初めて知った。さらに季節はめぐり彼女の教え子たち、椚ヶ丘中学3年E組の生徒が入れ替わる頃、それは三日月が生まれる2週間前。



僅か0.1gで核爆弾並みのエネルギーを放出する反物質。その粒子の加速サイクルを生物に組み込むことで持続的生成を可能にしたのが柳沢教授の研究でした。

電設の暗殺者死神はその人体実験を日々受けていた。彼の体を循環し始めた反物質エネルギーはその体組織を超人で柔軟な物質構成へと置き換えていった。柳沢はそれを触手と呼び恐れ、拘束台を強化。危険な監視は雪村あぐりに一任された。

そして彼女は知った。死神が自分の本名も生まれた日も知らないこと。優しい言葉や笑顔は全て暗殺のために身につけたこと。

彼も知った。彼女とフィアンセである柳沢との間に愛情が滞在しないこと。演技に邁進する自慢の妹がいること。

ふたりが出会って既に一年近く。いつしかそこは2人の語らいの場になっていました。
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