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船上の医師

第3章 君の肩には


「何をする!?」
「いいから黙って寝なさい!」
 龍水は中学三年生だ。伸び盛りである。既にあの170cm程度のベッドでは足りない身長だった。雪乃に怒鳴られ、しぶしぶ布団を被る龍水。だがひょこんと頭だけ布団から出して、こう聞いてきた。
「なあ。貴様は、寝ないのか」
「ん、私?寝不足なら当直で慣れてるし。私はここで君が寝るのを見てるよ」
「それは駄目だ!貴様も寝ろ」
 龍水が叱りつけるも、雪乃はでも他にベッドここにないし、と引かない。ええい仕方ないと龍水は布団をぴらりと捲った。
 
「……俺と寝ろ」
「え」
「俺と共に寝ろ!このベッドなら広いから足りるだろう!?船長として、寝不足の船員が出るのを黙ってる訳にはいかん」
 そう言われても、と雪乃は龍水を見つめ返した。鋭い眼光の前に、うっと息が詰まる。これは何を言っても引かなさそうだ。しょうがないなあと言いつつ、雪乃はモゾモゾと布団の中へ。並んで寝てみれば、龍水は自分より少し大きくて力強い。こんなに大きかったっけ、と思いながら雪乃は黙って布団の中で身を丸めた。大柄な龍水と、小さな雪乃。二人が並ぶ。
 
「……初めてだ」
 突如、そう零すものだから、雪乃はん?と聞き返した。
「今なんて」
「美女と共に寝るのは、初めてだ」
 そうなの?と雪乃は訊く。ああと頷く龍水に意外だなとまた囁いた。龍水はひどくモテるという話を聞いたのだ。それくらいやってると思ってたのだが。
「初めてが私で悪いな」
「む、いや。そんな事はない。俺はむしろ」
 龍水が言葉に詰まる。何?と聞き返すもなんでもない、と返され。二人は黙って布団の中で目を閉じた。睡魔が意識の隙間を縫っては入るように、雪乃を眠りの世界へと誘う。それに身を任せて、二人共に夢の世界へと旅立った。
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