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船上の医師

第3章 君の肩には


翌朝。朝の音楽と共に、皆が起床する。
「あーー!おじさん腰が……っ、腰が」
「歳じゃねーのか」
「せんくーーー!お前なぁ」
 白夜と千空があーだこーだ言いながら、食堂で朝ごはんをつついていた。香港風にエビやイカなど魚介類の入った、野菜たっぷり具だくさんのお粥である。その頃、医務室では
「んあ〜〜。あ、おはよう龍水」
「……ん、ああ」
 遅れて起きた雪乃が、龍水に声を掛けた。横で眠る龍水は先に起きてたみたいで、雪乃に視線を注いでいる。
「初めてだ」
「……?何が」
「美女と共に起きるのもだ」
 昨晩はありがとうな、と言いつつ龍水がベッドから降りる。どういたしまして、と言いながら雪乃も自室へと戻ってゆく。その二人の姿を見た船員は、ニヤニヤしながら「あの二人って……」と密かに噂した。朝の体操を終えて、エンジンで汽走。発着した場所へと無事に戻ってくる。
 
「おいテメー、雪乃」
 医務室に入ってきた千空に声を掛けられて、ん?と雪乃は首を傾げた。
「何、千空君」
「俺の才能がどうのこうの、スカウトだかなんだかの話嘘だろ。うさんくせぇんだよ」
 ありゃ、千空にバレたか。どう言い繕うか迷ったが、雪乃は素直になろうと覚悟を決めた。
「実はね。君はだいぶ先に、帆船を造る事になるの」
 その時の為に必要な経験なんだ、と雪乃は述べる。黙って聞いていた千空は、一言こう述べた。
「テメーには俺らの未来も見えてんのか?白夜にも先の事を言ってたじゃねえか」
 確かに今朝ベッドが合わなくて疲れてる白夜を、雪乃は「大丈夫!こんなに大変な思いしたんですから、今年いい事ありますよ!」と励ました。具体的にはその『良い事』はJAXAの宇宙飛行士募集の募集が出て、2013年11月に彼が応募。夢は叶いますよ、という事なのだが。そう見える?と訪ねる雪乃。
「あ゙ー。悪意は感じねぇが、何か図ってる気がすんな」
「見逃してくれないかな。本当に悪意はないんだ」
「ククク、そこまで言うならそうすっがな」
 小学生とは思えない言動にやれやれと雪乃は思いつつ去りゆく千空の背中を見送った。処女航海を終えて、下船式を執り行う。
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