第3章 君の肩には
「なんかテメーら、拗れてんな」
それを傍から見ていた千空がそう総括した。こうして、微妙にすれ違いながら雪乃と龍水はそれぞれの寝室へと向かう。ガシャガシャアン!と何か物が派手に壊れたような音を立てて、錨が降ろされた。風呂はシャワーブースがある。船の中の水は貴重だ。使い過ぎないようにしつつ、交代で皆で風呂に入る。
「千空〜〜〜ッ!おじさん悲しい!ベッドに身体入んねーよ〜」
「テメーがデカすぎなんだろ白夜」
「酷い!手厳しい!」
白夜の叫び声が聞こえる。船のベッドは二段ベッドで、170cm程度しか横の長さが無い。日本の成人男性の平均が約171cmなので……まあ大抵の男性は仰向けに眠れない。幅も60cmちょいと狭い。そんな中、小学生で身長も余裕な千空は大したことなさげだ。雪乃はというと、
「いやせっま……!」
と嘆いていた。女性である雪乃ですら、やや猫背にならないと座れないくらい高さがない。これは窮屈すぎる。そう云えば龍水は部屋どんなんだろう、船長だしベッド広いのかな、と寝巻きのまま龍水を探しにゆく。
「あ、フランソワさん。龍水君はどちらに」
司厨長として船に乗り込んでいたフランソワを見つけて、そう尋ねた。龍水様のお部屋は此方ですと案内されたが。
「いやせっっっま……」
「ん、なんだ雪乃!何をしている、美女が夜這いか!?」
「いや違うよ、龍水デカくなるのにこれは狭いよ」
そこには、やや広さはありながらもベッドの大きさは普通の船員と同じ程度の龍水の部屋があった。いずれ長身になる事を考えたら、あまりにも狭すぎる。
「何を言っている雪乃。船員に窮屈なベッドを提供するからには船長たる俺もまたこのサイズのベッドに……」
「えーい!何を言ってるんだ!責任も大きい船長だからこそもっと広いベッドで寝て、体調崩さないようにすべきでしょ!?ちょっとこっち来て」
「なっ、おい、引っ張るな貴様」
雪乃は龍水を引き摺る形で、医務室へと連れてきた。そこには広々としたベッド。無理やり龍水をゴロン!とベッドの上に転がす。