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船上の医師

第3章 君の肩には


「ん、何がだ」
「あ、えと。君の事だから、何もかも自分で切り開くものかと思ってた」
「そうだな。帆を張って動くうちは資格のない俺でも動かせるが、今はエンジンで動いている。そのうち俺自身の手で汽走も出来るようになる予定だ。俺は自分で世界を見て周りたいのでな」
 そう語る龍水。操舵室の窓から差し込む光が、彼の金の髪の毛をキラキラと照らしていた。綺麗、と素直な感想を雪乃は抱いた。何となく龍水は元々の素地がいいというか、もっと万能なイメージがあったのだが。そりゃ誰しもが最初から何でも出来る訳では無い。
 
「……君にも、そういう時代があるんだね」
「ん?あるも何も、皆そういうものだろう」
「うん。でも大丈夫、分かるよ。君なら出来る。この船をエンジンでも風の力でも、何方だとしても動かせるようになるよ」
 そう太鼓判を押す雪乃に、龍水が言葉を失った。
「今のは、友人としての励ましか?」
「いや。私は出来ると思っただけ」
 実際にそうなる未来を見ているからこそ、雪乃は断定した。その言葉に、面映ゆいと言わんばかりに龍水はやや表情を崩して、ああと頷いた。その後、雪乃は調子を崩した船員を医務室で面倒を見た。大抵が船酔いだったが、中には酷く気分を悪くした者もいたので、そうした人は重症でないか判断をしては医務室のベットに寝かせて様子を見た。やがて船員皆が調子を取り戻し、夕方。港から外に出ていた船はUターンして、横浜港へ向かう。
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