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船上の医師

第3章 君の肩には


「これが龍水の帆船だね。デカイな」
「だろう!?」
 数日後、横浜港にて。胸を張るドヤ顔龍水に、なんか腹が立つので肘で小突いた。何をする、と抗議を受けたので「何となくだよ」と濁す。何となくで小突かれてたまるか!等と言われ真逆な性格の二人は軽く喧嘩しつつもタラップをかけ登り乗船。医務室へと向かう。船の中は通路が狭くて迷路みたいだが、雪乃は事前資料で貰った船内図と照らし合わせて対応した。迷うことなく部屋へと辿り着く。
「ここが医務室だ!最低限の設備はあるぞ」
 どれどれ、と雪乃は中を探索する。少し広めのベッドに、機材が詰め込まれた壁の棚。ドクターヘリとまでは行かずとも、そこそこ整った部屋に及第点だなと感想を零す。
 
「そうだ、龍水。一つ相談なんだが」
「ん、なんだ」
 ミーティングルームに移動して、二人は机を挟みソファーに座る。海図を広げながら色々と説明をしていたのを聞いて、海の知識をつけていた。毎週発売されるというそれを見ながら、雪乃はゆっくりと言葉をひねり出す。
「君の要求通り、私は七海学園附属大学病院に配属されたし船医にもなった。なら此方の願いも一つくらい聞き届けて欲しいのだが。どうだ」
「ふむ。筋は通っているな。確かにそうだ。そうでなければ対等とは言えん。なんだ要求は」
 龍水はテンポよく切り返す。雪乃はぼんやりと思っていた計画の一端、最初の一手を口にした。
「……ある男の子を今回の航海に乗せて欲しいんだ。君の方から連絡をつけてくれ」
 ——石神千空。雪乃は彼に目をつけていた。龍水の欲張りを見て負けちゃいられないと思ったからなのか。3700年後の死人を少しでも出さない為には、どうしても3700年起き続けてきた最初の復活者の協力が必要と見た。出来る事なら3700年自身も起き続け、物語の最初から居るのがベストなのだが、それを成し遂げられる程の力は雪乃には無い。雪乃はあくまで医術に長けているのであって、それ以外はからきしだ。医療現場でも一人の天才医師で何とかする訳では無いし、手術だって助手や麻酔科医、オペ看など様々な立ち位置の人と協力するものである。雪乃は素直に千空に協力を仰ぐべきだと考えた。
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