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船上の医師

第1章 【Prologue】船医との出会い


欲しい物を、全て手に入れる。自分を欺かない龍水に着いてきてくれる強力な味方。船医も出来ればそういう人材がいいのだが、と思いつつ龍水はフランソワから得た情報を元に片っ端から船医にならないかとアタックしてみるも。断られ玉砕しては、また新たな医者を探すという事を繰り返していた。せっかく十四歳にして世界最新鋭の帆船を作らせたのにも関わらず、これでは一向に航海に出られない。

 そう思いつつ、龍水は気分転換に旅行に行こうと計画した。新しく作らせた自身の帆船で処女航海するつもりだった、ハワイ島へのチケットを取りクラスメートも誘っていざ空の旅へ。普段ならば自家用ジェット機で行く所だが、最近の放蕩息子ぶりに叔父上が暫くは個人的な利用は許さないと厳命が出た。そのせいで龍水にしては珍しく一般の日本の航空会社を利用する羽目になった。まあこれはこれで一般の人々の生活を楽しめるし良いぞ、と龍水は前向きに捉えたが。

 無事に搭乗手続きも済ませ、龍水は機内食に手をつけた。なかなかに美味だな、と舌鼓を打ちながら食事を堪能する。食後、七海学園のクラスメートと語り合っていると、

「きゃ……っ!すみません、何方か来てください!」
「お客様!?どうかなさいましたか」

 龍水の斜め前の座席で、客が悲鳴を上げた。キャビンアテンダントが駆け寄るも、女性客がこの人の気分が良くない、とだけ訴えた。ぐったりする男性が横に座っている。女性客は横に座る別の客が急に容態が悪くなった場面に出くわしたようだった。男性の唸る声が途切れ、意識が消失する。

《お客様の中に、お医者様はいませんか。機内に急病人が発生しております。お客様の中に……》

 ぽーんという音と共に流れる機内に響く音声。英語で流れた後、日本語で再度同じ内容が繰り返される。——ドクターコール。その文字が龍水の脳裏を過ぎった。

「搭乗者リストの方は」
「確認しましたが、医師の方はおられないようで……」

 キャビンアテンダントの緊迫した会話が龍水の鼓膜を揺らす。確か日本の航空会社では、事前に日本の医師免許を所有する人に登録してもらう事で、搭乗者リストから医者が乗っているかを把握。座席にすぐ様赴き、医療行為の援助協力をお願いできる仕組みがある。無償の医療行為で損害賠償責任が起こった際にも、故意または無過失の時をのぞき航空会社が責任を持つのだ。
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